シンギング・リンの調べ「聖なる鈴響」収録ストーリー

CD「聖なる鈴響」の制作秘話をお伝えします。
2006年の11月、私は龍村仁監督ご夫妻からご招待を受けて、映画『地球交響曲第6番』の完成披露試写会に出席しました。
※ 『地球交響曲第6番』 HP  http://www.gaiasymphony.com/co_guide6.html

全ての存在は響き合っている

シンギング・リンが映画の中にどのように出演しているかは、この日に至るまで秘密だったのです。
映画を観た後に、お二人がシンギング・リンのことをどれほど大切に思っていてくださっているのかを感じて、 私は感謝の気持ちでいっぱいでした。

そして、次の春から映画のロードショーや自主上映が開始されれば、 シンギング・リンの音色が多くの方に認知されることになることが予見されました。
その頃までにも、お客様からシンギング・リンのオリジナルCDはないのかと多数のお問い合わせをいただいておりました。

そこで、思い切って龍村事務所にCD製作についてのご相談をしてみたのです。
するとプロデューサーのゆかり氏が親身になって話を聞いてくださいました。

映画の撮影でシンギング・リンの音色をすでに録音されていたご経験から、
「シンギング・リンのそのままの音色を録音するには相当の技術と経験が必要とされる。
そのスキルをもった一番の適任者について見当はあるが、この仕事を受けてくださるかどうか…。 とにかく、私からお話してみましょう。」とおっしゃってくださいました。

そして、2006年の12月の年末、ゆかり氏から突然お電話がありました。

「12月30日に岡山のオフィスに伺いたい。その時に川崎さんという方をご紹介したいのです。」

かくして12月30日の午後、ゆかり氏と川崎義博氏を岡山オフィスにお迎えし、ご挨拶をさせていただきました。
初めてお会いした川崎氏は、ラフな黒ずくめの格好をされ、寡黙で気難しそうな印象の方でした。

そして、簡単な自己紹介の後、とにかくシンギング・リンを奏でてくれないかといわれました。
あわただしい展開に少し慌てながらも、心をこめてシンギング・リンを奏でた後、川崎氏がおっしゃってくださった言葉はとても印象的でした。

「これは本物だ。」

先ほどまでとはうって変わって、緊張が解けて笑顔になった川崎氏は、
「ゆかり氏からシンギング・リンの話を聞いたが、その時点ではこの楽器が本物かどうかの確証がもてなかった。だから、この楽器が本物でなかったら、CD製作の仕事は断るつもりでした。」とおっしゃったのです。

そういった経緯を知らされていなかった私ですが、どれだけ安堵し嬉しかったか…。
それからは、楽しい話に花が咲き、場所を移してお食事を楽しみながら時間が許すまで談笑したのでした。
早くもその宴席で、CD製作の段取りはどんどん進められていきました。



川崎義博氏のプロフィールです。

神戸出身。80年頃よりスタジオワーク、音響オペレートワークに従事。
その後、音響システム設計を始めとする多くのシステムデザインを担当。
海外アーティストのレコーディング、サウンドスケープ作品の製作、
サウンドデザインなど、一貫して“音”の世界を構築することに係わる。
現在は「新しい音と空間」の創造を目指し、ニューメディアのフィールドで活躍中。
現在、サウンド・デザイン・ラボラトリー「NADI」代表。
重要な仕事としてSt.GIGA番組製作ディレクターがあり、
その成果の一部は sensorium / senseware コーナーにある 「World Ear」 にもおさめられている。
その他、日本サウンドスケープ協会理事、京都国際フォーラム企画委員など。
東京藝術大学、和光大学講師。
CD 「バリ島」他11作、CD-ROM 「AUBE」他6作、DVD「屋久島」、音の絵本「ドングリと山猫」他、
インスタレーション「WWF ナチュラルブリーズ武道館」他多数。


これからどんな展開になっていくのでしょう?  

早くもその宴席で、CD製作の段取りはどんどん進められていきました。
プロデューサーのゆかり氏は大変有能な方ですから、大変多忙な川崎氏のスケジュールの合間をどんどん埋めていきます。

あっという間に、新年1月の下旬に、川崎氏とシンギング・リンの録音のデモンストレーションをし、2月には本番の録音をする段取りが決まりました。
そしてCD製作の進行は映画『地球交響曲第6番』のサウンドトラックCD製作と平行して行うこととなったのでした。

年が明けて2007年の1月20日、川崎氏がいくつかの録音機材と一緒に朝から岡山にお越しになられました。
その日は録音の実験ということで、マイクの種類やセットする場所によっての録音の実験が行われました。
奏で方の種類によって録音の仕方が異なります。

また、シンギング・リンの音色の特徴から、どんな録音場所が適切なのか?
また演奏者の私は何を表現したいのか?

実験をしながら川崎氏のたくさんの引き出しからいろいろな可能性が引き出されていきました。
川崎氏が世界中を旅していろいろな自然音を録音されていることもそのとき知りました。いろいろな水音や風音、鳥のさえずり、虫の音などなど…
そして、雑談の中から、私が幼い頃によく見た夢の話になりました。

その夢の中の光景が、光り輝く鍾乳洞の内部のようだという喩えから、
シンギング・リンの録音を鍾乳洞の中で行ったらどうだろうという話に発展していったのです。

これは思いもかけない展開でした。
岡山に引っ越してまだ半年でしたが、すぐに鍾乳洞について調べてみると、県北に大きな鍾乳洞があることがわかったのです。
そこで、2月にシンギング・リンの録音を鍾乳洞の中で行うことが決まりました。
いろいろな録音実験が終わったのは17時を過ぎていました。その日の夜も、川崎氏と一緒に食事をしながら大変興味深いお話をお伺いしたのでした。


あいにく雨模様の寒さ厳しい天候でした。
朝早く、川崎氏を岡山駅でお迎えして、録音機材とともに岡山県新見市の日本三大鍾乳洞「井倉洞」に向かいました。

「井倉洞」は岡山県指定天然記念物で、新見市井倉、阿哲台地の石灰岩地帯に、長年、雨水等が浸食してできた、全長1,200mの鍾乳洞です。

岡山県高梁川上流県立自然公園にも指定されている井倉洞は、高梁川沿いにそそり立つ直立240mの絶壁の壁面に入口があり、鍾乳洞の中の天井からぶら下がる「つらら石」、下からタケノコのように立つ「石筍」等、様々なかたちの鍾乳石が照明に浮かび上がる姿はまさに幻想の世界で、まるで美しい石のカーテンのようです。

洞内にしたたり落ちる水は炭酸カルシウムを含み、それらが積み重なると再び石をつくり、「銀すだれ」、「水衣」、「くらげ岩」等と名づけられた約30の奇石、怪石は洞内に流れる高さ50mの「地軸の滝」などとともに、見る人に自然芸術の面白さを十分堪能させてくれます。

洞内への入り口まで続く川沿いの道にはお土産物店や食事処が軒を連ねていますが、観光シーズンから外れた真冬の平日は、どこも雨戸を硬く閉じ、閉店していました。さらに雨の日とあって、お客様はほとんど見当たりません。
録音するにはなんともラッキーなことに、鍾乳洞は貸しきり状態だったのです。

洞内はアップダウンもあり、ゆっくり歩くと約1時間の道のりです。
録音機材とシンギング・リンを3セットの大荷物を担ぎ、防寒具を着込んで、いざ鍾乳洞の中へと足を踏み入れました。



鍾乳洞に入ってすぐの“延命の泉”と名付けられたスポットで川崎さんの目が輝き、いきなり
「この場所は素晴らしい、ここで録音をしましょう。」 とおっしゃられました。
しかし、まだ洞内に入ったばかりで、地図にはその先の名所がたくさん記されていましたので、私は、洞内を一周してからここに戻ればどうかと提案をしました。

この時、私はまだ、川崎さんの超感覚ともいうべき、 立体的な聴覚能力について、ぜんぜんわかっていなかったのです。

川崎さんは大人で、私の意見を汲んで、そのままその先に進んでくださったのでした。
井倉洞は素晴らしい鍾乳洞で、 何億年もかかって自然の営みが創り上げた地球の息吹に驚嘆させられるスポットが次々と現れました。
川崎さんは機材を下ろし、洞内の水音を録音し始めました。

私もシンギング・リンを奏でて響きを確かめました。
面白いことに、シンギング・リンの音色がよく響く場所と、 音が吸収されてしまうのか、まったく響かない場所がありました。

また、響き方にも縦方向や横方向への響きがあるかと思えば、 音が重なり合って聴こえたり、
高音域だけが響いたり、重低音しか響かない場所もありました。
録音するためには機材をすべて下ろし、 演奏しやすいように、シンギング・リンを取り出して安定よく並べ、
音がうまく入るように録音機材をセットしなければなりません。
マイクによって集音に方向性や特色があり、 マイクの選び方、設置の仕方によって、音のデザインはまったく違ってしまうのです。

川崎さんは、まず、ご自分の耳で、どの場所のどの高さでシンギング・リンを奏でることで、どんなサウンドデザインができるのかを確認した後、
録音機材をセットして、ヘッドホンを通してそのサウンドデザインを確かめながら、 微妙な音の調節をしていかれました。

私は、まず川崎さんに指示されるとおりにシンギング・リンを奏でます。
そして、セッティング中にシンギング・リンを奏でながら、 自分の内側の精神統一を図っていきます。
録音本番前には祈りをささげ、自己の心身の統一をして深呼吸。
最初の頃は緊張して硬くなってしまいましたが、 テイクを重ねるうちにリラックスして演奏できるようになっていきました。


確か3箇所目の録音のセッティングの最中だったとおもいます。
その場所は下のほうに空間が広がっており、 私はその中に降りて、ほらの中でシンギング・リンを奏でることになりました。

私が足元に気をつけながら下りると、 そこはちょっと薄気味悪いあまり心地よくない空間だったのです。
せっかく下に下りたので、シンギング・リンを奏でましたが、 重低音の音が消え入るような音色となり、 録音をやめて早々に上に上がることにしました。

そして、次の場所に移動し、またセッティングです。
するとそのとき、撥が滑り落ちて、洞内の川の中に落ちてしまったのです。
びっくりして撥を拾い上げようとしたとき、 私の中で、川の水で手を洗って清めを行おうという思いが湧き上がりました。

実はさっきのほらの中に入って以来、 なんだか体が重く感じられていたのです。
早速冷たい水で手を清め、感謝の祈りをささげました。 すると、不思議なことにとてもすがすがしい気分になれたのです。

そのあとに録音したテイクを川崎さんから褒められたことはとてもうれしい出来事でした。
川崎さんのサウンドデザイン能力は、経験と実績と才能に裏打ちされた素晴らしいものでした。
瞬時に、音の奥行きや広がりを捉え、どのスポットでどの機材を使ってどのように録音するのかを コンピューターより正確に計算されるようでした。

そして録音というセッションの中で、私をリラックスさせ、 私の持つ能力の最大限のポテンシャルを引き出すように誘導してくださいました。
けして怒ったり感情を荒げたりすることなく、 実に淡々と、にこやかに、繰り返してテイク撮りをしてくださいました。

洞内を一周する間にいったい何箇所でどれだけの録音をしたでしょうか?
すでに4時間が経過し、数え切れないほどのテイクを録音していました。
それからいったん車に戻って食べ物を補給した後、 もう一度“延命の泉”のスポットで録音することになりました。

洞内を一周してみて、“延命の泉”のスポットがどれだけ録音に適した場所かということがわかりました。
正直、この場所だけの録音でもよいと思えるくらいの場所でした。川崎さんには最初からそのことがわかっていたのです。
しかし私が納得するために、4時間もお付き合いしていてくれていたのだと痛感しました。

この場所はスペースも広くシンギング・リンを6個並べて、 私は座って演奏することができました。
最初は椅子を使おうとしたのですが、高さが合わず、 地面に布をしいて座ることにしました。

演奏していると、着ていたジャケットの衣擦れの音が気になりだし、 ジャケットを脱いで演奏することになりました。
何回かテイクを重ねるうち、 私は寒さすら感じなくなり、演奏に集中し夢中になっていきました。

そして、16時30分の閉洞の知らせのために洞内放送が入るまで、 一心不乱に演奏をしていたのです。
気がついたときは体が冷え切っていました。
氷のような岩の上に座り、ジャケットも着ず、手袋もせず、 一時間以上瞑想していたような気がしました。

急いで片づけをして洞内を出ました。
川崎さんが、「とても素晴らしい音が撮れたよ。」といってくださったことが 何よりうれしく心に響きました。
記念撮影をして、井倉洞を後にしたのはその日の17時頃でした。


そのまま私たちは倉敷に向かいました。夜、倉敷の音楽スタジオを借りていて、そこでさらに録音を行うことになっていたのです。
倉敷へいく途中で夕食を食べ、エネルギーを充填して、 19時から21時までスタジオ録音が行われました。

このときに使われた録音機材は人体の形をしているマイクで、 人間が聞いているのと同じような感覚で音を録音できるというものでした。
この人体マイクのびっくりするお値段は、高級外国車一台と同じくらいだそうです。
このとき、この人体マイクにシンギング・リンを被ってもらって、ヘッドマッサージの要領で録音をしたり、3セットのシンギング・リンを人体マイクの周りにセットして、ハーモニックマッサージの要領で録音をしたりしました。

このときの録音機材のセッティングと片付けはすべて川崎さん一人で行われました。
下手に触って壊してはいけないということで、とても慎重な取り扱いでした。
すべての録音と片づけが終わり、川崎さんをホテルにお送りして家に戻ったのは夜の11時頃でした。
緊張と興奮と寒さで疲れきっていました。
あまりの寒さに体がついていけなかったのでしょう。 ひどい高熱にうなされて、 結局3日も寝込んでしまったのでした。

3月に入り桃の節句が過ぎた頃、 大変お忙しい川崎氏から、 デモテープが届きました。
そのデモテープにはちょっとした実験がいくつも試みられていました。
そのデモテープを聴いて、 プロデューサーである龍村ゆかり氏と私の意見を 川崎氏に伝え、もう一度方向性を確認し、下旬には8つの音の章が大体出来上がってきました。

そして、CDと曲のタイトルは、ゆかり氏にお願いすることになりました。


1曲目は、「時の滴」
2曲目は、「聖なる鈴響(りんね)」
3曲目は、「風の波」
4曲目は、「水惑星」
5曲目は、「緑の鼓動」
6曲目は、「月への潮流」
7曲目は、「静かなる祈り」
8曲目は、「Tuning of Spirit」

どの曲名もとても魅力的で、曲の内容を端的に示してくれる素晴らしい曲名となりました。
そして、CDのタイトルは『聖なる鈴響(りんね)〜Tuning of Spirit〜』という、まさにシンギング・リン第一弾のCDにふさわしい素敵なタイトルに決まったのでした。

では、一曲ごとにその特徴を解説してみたいと思います。

1曲目は、「時の滴」
井倉洞での水音からはじまります。
ザーっという水音は深夜テレビの砂嵐音のようでもあり、私たちの意識を一気に変性意識にいざなってくれる効果があります。
そして遠くから響くシンギング・リンの音色…シンギング・リン宇宙のうねり音がやさしくあなたを包みます。
一気に脳波はミッドアルファからシータ波への方向へと運ばれていくような、不思議な感覚が体を駆け抜けていくことでしょう。
頭は少しぼんやりして、体の力が抜けてリラックスしていくでしょう。

2曲目は、「聖なる鈴響(りんね)」
CDのタイトルにもなっているこの曲はシンギング・リン宇宙の打音からはじまり、
うねり音、そして、シンギング・リン大地のうねり音、打音が重なるように演奏されていきます。
倉敷の音楽スタジオで6個のシンギング・リンを演奏した時の曲。
サウンドレゾナンス現象で、6個のシンギング・リンが共振共鳴を起こし、 幾重にも重なる倍音の妙を感じていただけることでしょう。
シンギング・リンの静かでたおやかな音色を存分にご堪能いただける作品です。

3曲目は、「風の波」
シンギング・リンを擦って奏でるうねり音を中心に録音された曲。
それらの音色が、まるで風が吹いているような、 体を清めてくれているような、 不思議な感覚を呼び起こします。
短いですが、力強い作品となりました。

4曲目は、「水惑星」
井倉洞で収録した演奏です。
心地よい水音とシンギング・リンのコラボレーション。地球に生まれた私たちの喜びを湧き起こしてくれます。
体の中のすべての流れが清らかに澄んでいくような、 細胞が活性化していくような 潤いある一曲となりました。

5曲目は、「緑の鼓動」
川崎氏が世界を旅したときに録音した虫の音色に、シンギング・リンの演奏を重ねました。
インナーチャイルドが幸せを再確認しているようなとても懐かしい郷愁を感じます。
緑の草原で、月明かりのもと、 穏やかに瞑想しているような感覚を覚えることでしょう。

6曲目は、「月への潮流」
バックに流れる水音は、川崎氏がある聖地で録音した湧き水の水音です。
小鳥のさえずりが夜明けを感じさせ、 朝の清らかな空気感のなか、 水音とさえずり、シンギング・リンの音色が清々しく響きます。

7曲目は、「静かなる祈り」
井倉洞の“延命の泉”というスポットで演奏した曲です。
井倉洞の洞内に多重にも響く水滴の音や水の流れる音にシンギング・リン6個の音色が重なり、鍾乳洞に響き渡ります。
宇宙の安寧を、心から祈りながら、 無心に演奏をしました。

8曲目は、「Tuning of Spirit」
倉敷の音楽スタジオで、人体マイクに6個のシンギング・リンをハーモニックサウンドドレナージュの要領でセッティングし、セラピーをする要領で演奏して、収録した作品です。
特殊な録音をしていますので、ヘッドフォンでご視聴していただくと音の臨場感が鮮明に伝わり、とてもびっくりされることでしょう。
シンギング・リンの微細な振動まで伝わってくるような
まさに音を体感できる、シンギング・リンならではの一曲といえるでしょう。



こうして、曲名と曲の内容、サウンドデザインが決まり、川崎氏はさらなる微妙なサウンドデザインに取り掛かりました。
そして、プロデューサーの龍村ゆかり氏と私はCDの装丁デザインに取り掛かることになりました。

まず、ジャケットをはじめとするアートデザインを、映画『地球交響曲』のポスターをデザインされている向井一真氏にお願いすることになりました。
向井氏は著名なデザイナーですし、お忙しい方ですので、龍村ゆかりさんのお願いでなければ、この仕事を請けてくださっていたかどうか…
向井氏にはサンプルCDをお聞きいただき、タイトルをお伝えしたり、録音の様子をお伝えしたりして、デザインのイメージを膨らませていただきました。

私から特にお願いしたのは、シンギング・リンの音色が波紋になって広がっていくようなイメージを盛り込んで欲しいということでした。
向井氏は、鍾乳洞や、水面、水中、シンギング・リンの写真を、コンピューターグラフィックによって幾重にもコラージュし、とても深遠で幻想的な、デザインをご提案くださいました。

大変光栄なことに、ゆかり氏のおかげで龍村仁監督が、 ジャケット用に文章を執筆してくださることになったのです。
この文章が私の手元に届いたとき、 私はとても感動して、泣いてしまったのでした。
約800字にわたる文章なのですが、 帯のところに抜粋した部分をご紹介いたします。

聖なる鈴響・シンギング・リンの音を浴びていると、 からだの内奥から、 えも言われぬ心地よさが沸き起ってきて、からだも心も解きほぐされていく。
それは、鈴響の音霊(波動)が、細胞のひとつひとつと共鳴し、不協和音を調和の音へと チューニングし直してくれるからだろう。
いのちはいつだって調和の交響曲を奏でたい、と願っているのだ。
龍村 仁


私の頭の中に存在していた音色が、
シンギング・リンという楽器となって結晶したとき、
この音色がいつから私の内側に存在したのだろうかと、記憶を辿っては捜していた。
それが、
このCDを製作するにあたっての何気ない会話の中から、
私が幼い頃に繰り返してみた夢の記憶がひょっこりと引き出され健在意識に上ったとき、
やっとわかったのである。
幼い頃に何度も繰り返してみた夢だった。
金色と銀色が輝く光の世界、
幾重にも重なったカーテン状のオーロラが揺らめいて拡がっている。
きらきら輝く透明で清らかな液体が湧き出でてせせらぎ、流れている。
馨しい芳香と、確かに、シンギング・リンの音色を遥かに聴きながら、
私はその空間の中に擁かれて、喩えようもない安心感と幸福感に包まれていた。
小学校の遠足で、初めて鍾乳洞を訪れたとき、暗くて長いトンネルの先に、
証明に照らされたあの夢の空間が拡がっていた。
しかし、
そう思ったのは一瞬で、光も香りも音もまったく違っているのに気が付いた。
でも、
鍾乳洞の光景が一番似ているように感じられたから、
鍾乳洞を好んで訪れるようになっていった。
井倉洞でシンギング・リンを奏でたとき、何度も意識が遠のいた。
あの夢の中にまた戻っていけたのだ。
こんなにうれしい経験はなかった。
このCDを聴いてくださるすべての方が、
喩えようもない安心感と幸福感に包まれてくださることを、
心から願っています。

和真音