- ☆ 春の薬草の代表
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ヨモギはキク科の多年草で、葉の形も菊の葉に似ています。ヨモギは餅草と呼ばれているように、春になると草餅をつくり仏様に供えたりしますが、その草餅の中に入れる薬草として色あざやかで香りもよく、多くの人に好まれています。また、昔からお茶や青汁として使ったり、お灸をすえるときのモグサの材料としても有名です。
東アジアや日本のどこでも自生しています。地下茎を伸ばして繁茂していくので、その辺一帯に群生しています。特に河原の土手などに多く見られます。
食用やお茶、お風呂に入れるものは、それほどの高さにならないうちに摘んでしまいますが、夏ごろになると1m近くにもなります。そして葉もかたくなってきます。
ヨモギの利用法は他にもあります。枕にすると安眠できますし、座布団の中にも入れたりします。また草木染めの材料などにもなります。最近では、ガンやアトピー性皮膚炎などに研究されてきて注目をあびています。
- ☆ ヨモギは漢方の重要処方
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漢方では乾燥させたヨモギを「艾葉」と呼び、いくつかの処方があります。
古書には艾葉は気、血を温め、経脈を温めて、寒湿を去り、冷痛を去ると記されています。
処方名「きゅう帰膠艾湯」というのは、産後の肥立ち、痔出血、血尿などに効くとされています。
処方名「茵陳蒿湯」というのは肝臓病や黄疸・便秘・口内炎・皮膚のかゆみなどに使用され、あらゆる内臓の炎症を鎮める働きをし、春先の眠れない人、目や鼻粘膜が充血したり、出血する人、痔出血などにも使われるのです。
- ☆ 生命力の強さにあやかる
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肥料も何もなくても、人に踏まれたり、むしりとられても繁殖する生命力の強いヨモギは、昔の人にとっては非常に貴重な植物であったと思われます。ですから、いろいろな使い方、食べ物にいたるまで広く人々に浸透しています。子供のころに田んぼの草とりの手伝いをしていて鎌で手を切ったことがありますが、私の母はあぜ道のヨモギを摘んで、手の平でよくもんで、すぐ傷に貼りつけ、自分がかぶっていた手ぬぐいをさいて巻いてくれました。しばらくすると痛みも出血もなくなり、ヨモギの威力に驚いたのをおぼえてます。
- ☆ ヨモギは体質改善の妙薬
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飲用にしろ、食用にしろ、入浴剤にしても、ヨモギの卓越した力を考えると、とても安心できます。先人たちは経験をもとに、さまざまな利用法を伝えてくれています。
ヨモギ風呂に入ると体が温まり、肌もスベスベになります。お茶がわりに長期服用すると体質改善になりますし、しぼり汁は食中りや虫下し、女性の浄血・貧血に有効です。よくもんで傷に貼りつけると効きます。ヨモギの芳香に含まれる精油には、自律神経を調節する作用があります。
このように、ヨモギは万能薬として貴重な薬草なのです。
- ☆ 採取時期・場所
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九州、四国、本州のあらゆる所に自生していますが、できるだけ自然環境のいい所で生き生きと茂っているものを採取します。ヨモギは地下茎で繁殖する多年草ですから、上部だけでなくてもいいのです。春のもっとも美しい色の時の採取が望ましいでしょう。また、土手などにあるものを持ち帰って、自宅の庭などに植えるか、プランターに植えたりしておくと便利です。
- ☆ 保存の仕方
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排気ガスなどのない清潔な場所のものを採取してきたら、水洗いしたのち天日の陰干しにして、カサカサになるまでよく乾燥させて、通気性のある紙袋に入れて、風通しのよい所につるしておくといいでしょう。生命力の旺盛なヨモギですが、秋まで十分ありますので一度に多く摂りすぎず、足りなくなったら新しく採取して調整するほうがヨモギ特有の精油成分であるシネオールの香りが楽しめます。
- ☆ 利用の仕方
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入浴には3つの方法があります
- 乾燥させたもの100gほどを煎じて洗面器などに入れて、足湯・手浴・腰浴にします。
- 生のヨモギ500gくらいをさらし木綿の袋に入れて、浴槽の中に水から入れます。生葉は特に、精油成分が多いので、香りがよく、ストレスの多いときなどに最適です。
- 乾燥葉100~200gをさらし木綿の袋に入れ、水から浴槽に入れて温浴すると、体の芯まで温まり、肌荒れ・冷え・腰痛・痔にも効果 があります。
- ☆ モグサの作り方
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腰の痛みなどに、モグサを使って灸をすえる、そのモグサはヨモギの葉からつくります。
乾燥させた葉を砕いてふるいにかけると、柔毛(にこげ)の綿のようにかたまって残ってくる、これがモグサになります。
- ☆ 含有成分
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たくさんの有効成分があります。
第一にあげるのは葉緑素です。クロロフィルともいいますが、増血作用、殺菌作用、浄血・抗アレルギー作用、脱臭、免疫力アップ作用があります。第二にビタミンA・B1・Cなどが多く、ミネラルといわれる鉄分やカルシウム、リンなども含まれています。
第三は食物繊維がホウレンソウの約10倍もあることです。現代人の不足しがちな食物繊維をとることで、腸内細菌を増やし、直腸ガンの予防にもなります。
第四に意外に知られていないのが虫下し作用です。
第五はヨモギの精油成分の多いことで、シネオールやアルファーツションなど何種類かあり、防腐剤や抗菌作用・食欲増進などにも役立つものです。
そして何よりもうれしいのは、この芳香が脳を通じて私たちの心に作用することです。
近年アロマテラピーが進んできていますが、現代人の心身の疲れが香りの作用により自律神経や脳の動きを活発にしたり、安定させてストレスを発散させて健康を維持してくれるのです。このような働きは、また私たちのインターフェロモンも増やし、ガンの予防にも役立つといわれています。
ヨモギ風呂に入り、新陳代謝を高めて血流を増やすことも疾患を減らすことにつながります。
- ☆ 入浴効果
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疲労回復
ヨモギの成分は湯気とともに体内に入り、脳からリラックスしていくので、ゆっくりと40度~39度くらいのぬるめのお湯に入るといいでしょう。
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分解酵素の働きで、美肌、きめこまやかな皮膚をつくります。
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クロロフィル
アトピー性皮膚炎やかぶれなどの状態を修復してくれます。
- 成分豊かなヨモギ風呂は、少しぬるめのお湯でも湯ざめしませんので、温補効果により、よくねむれ、翌朝の充足感を味わえます。