プレマルシェ・ジェラテリア チーフ・ジェラティエーレ
ヴィーガン・ジェラート・マエストロ® 中川信男にインタビュー

プレマ株式会社がなぜジェラート作りを始めたのか?そこにはさまざまな物語があったのです。

プレマ株式会社がなぜジェラート作りを始めたのか?
植物性素材だけでも、乳化剤を使わなくても
「本当においしい」のはなぜ?

これまで語られなかったことも含め、
「誰もが笑顔になれる」ジェラートが生まれた背景、
そこに込めた想いを聞きました。

プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

プレマルシェ・ジェラテリア チーフ・ジェラティエーレ
ヴィーガン・ジェラート・マエストロ®
中川信男にインタビュー

価値ある素材を活かすために

―― これは何度も訊かれてきた質問かもしれませんが、自然食をずっと扱ってきたプレマが、なぜジェラート作りを始めたのでしょうか?
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

自然食屋が、なぜジェラートなのか。ジェラート作りを始めた当初から、よく訊かれることです。動機はひとつではありませんが、大きなきっかけとなったのが「バオバブ」です。

バオバブは、アフリカ大陸に多く分布している、数千年を生きる生命力の高い樹で、その果実は「神の果実」と呼ばれ、優れた効果を持ちます。私は 2008 年ころからバオバブに注目していて、アフリカ産のサンプルを取り寄せるなどしたのですが、販売に耐えうる品質のものはなかなか見つかりませんでした。しかし 2012 年ころから、欧米市場で質の良いバオバブを見かけるようになり、プレマでも取り扱いを始めました。

その後、2016年に、雑誌『veggy』経由で弊社のバオバブパウダーが TV番組で紹介されるという出来事がありました。そのころはちょうどスーパーフードブームということもあり、TV番組で紹介されるや否や、注文が殺到。その需要に応えるために2,000万円分の輸入を決めました。しかし輸入には時間がかかります。商品が入荷したのはオーダーから 3カ月後くらいで、この間に世間の興味関心はすっかり薄れていたんです。

TV番組での紹介からの注文殺到はこれまでに何度も経験しましたが、自社商品では初めてのことで、10年ごしで注目してきた素材がやっと日の目を見たという想いもあり、目がくらんだんですね(苦笑)。それに、最初の波は去っても、第二波、第三波があると思ったのですが、それもなかった。

でも、本当にすばらしい商品なんです。健康に寄与して、しかもおいしい。私自身もスタッフも、それはすごく実感していて、ジュースにしたり、キャンディーにしたり、コツコツ売ってきました。だけどなかなか売れない。このままでは2,000万円分を無駄にすることになると、お客さまへの無料プレゼントとして配り始めました。これでなんとか在庫は消化でき、捨てるという最悪の事態には至りませんでしたが、大きな損失となってしまい、そのときの情けない気持ちはよく覚えています。

―― ブームの難しいところですね……そこから、どうやってジェラートにつながっていったのでしょうか?
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

このとき輸入したのは、アフリカ産のバオバブをイタリアの製薬工場で加工したものです。衛生的で安定した品質のものですし、イタリアではバオバブはハーブやプロポリスなどと同じ、日本人が考えるところの漢方的な位置づけで、薬理性のエビデンスもある。そんなすばらしいものなのに、無料でもらったものだと、なかなか「これはいいものだろう」というフォーカスがされづらい。何より、日本には厳しい法律があって、効能や効果は一切説明できない。このとき、「自分たちでモノづくりをするしかない」と思ったんです。

価値あるスーパーフードや機能性のある素材を複合的、横断的に使って最高においしくて体に良いものを作りたい。そうすれば、確実にお客さまに届けることができる。そう考えて、社内ミーティングで話題にしたときに、あるスタッフが「ジェラートはどうでしょう?」と言ったんです。私自身はそれまでジェラートに全く興味がなかったのですが、スタッフの言葉をきっかけに、いけるかもしれないと考えました。

―― その一言がきっかけだったんですね。不思議な感じがします。でも、それまであまり興味がなかったジェラートで、なぜ「いけるかも」と考えたのでしょうか?
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

というのも、ジェラートは溶かせば液体です。混合した液体を専用の製造機で固めればできるはずで、形を作る技術が必要ない。クオリティの高い機械を導入できれば、人のスキルを問わず製造できるのではないかと考えたんです。もちろん、骨格となるレシピは重要ですが、いろいろなものを組み合わせて、または混ぜて製品を作るという点に関しては、私が20年間やってきた、専門家といえることです。

早速ジェラートの製造機の会社と連絡を取り、イタリアで開かれた“ジェラート大学”に行って学んだところ、レシピこそが重要であり、凍らせる工程の品質は機械の性能にだけ依存するという仮説は、まさに予想通りでした。しかも、ジェラート作りではミルク以外では加熱工程がないため、熱に弱い栄養素もそのまま残せる。価値あるスーパーフードを活かすために最適な方法です。何度かイタリアの講座に通い、レシピ設計の基本と、その応用編を学びました。通訳がない専門性の高い講座には、日本人が全くいなかったのが驚きでもありました。

また、京都オフィスのあるビルの一階が、もともとお菓子屋さんだった居ぬき物件というのも、ひとつの布石になっていました。前の賃貸オフィスを不本意ながら追い出され、縁あってこのビルを買ったときからずっと、いつかここでモノづくりをしたいと思っていました。

機能性があって本当においしい

―― スーパーフードをふんだんに使ったジェラート。食べて健康になれるイメージです。
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

価値ある素材をふんだんに詰め込んだプレマルシェのジェラートには、すべてに機能性があります。ジェラートを機能的なものにしたいというのは当初から決めていたことです。別のオリジナルサプリメントも平行して開発しており、消費者庁の機能性表示の認可を得るまでに2年かかりましたが、2つのサプリで機能性表示食品の認可を取得しました。このような布石もあって、ジェラートでもまた、同じように食べたことによるメリットがあって、なおかつ絶対的においしいというレシピを考えていました。

ただ、サプリメントほど各種のテストを経ている訳ではないので、決定的な証拠に欠けていました。しかし、ついに先日、プレマルシェのジェラートを食べると、冷たさを楽しみながら、食後に血流量が上がるという試験結果も出ました

バオバブの他にも、たとえば、プレマルシェのジェラートに多用しているアガベイヌリンは、水溶性食物繊維を多く含み、粘り気を出すという特徴があります。水溶性食物繊維は、糖質吸収を阻害する働きがあり、血糖値の急上昇と急降下を避けることで、食害を抑えることができます。極端な糖質制限ブームは収束しつつありますが、現代人に糖質過剰の問題があるのは事実で、甘くておいしいのに、血糖値に影響を与えにくいという「都合のいい」ジェラート作りでも特にフォーカスしたポイントです。

また、ヴィーガンレシピのジェラートには国産のこめ油をよく使っています。自然食で油というと菜種油を使うことが多いのですが、菜種油は香りが強い。こめ油は味がニュートラルで、しかも脳に対する機能性があります。脳を労わることは、現代人にとってすごく大事なことです。さらに、脂肪燃焼を助けてくれる有機ココナッツオイルも味を調整しつつ多用しています。

他にも、与那国島の風化サンゴから作られる、サンゴミネラル。これは、与那国島にしかないものです。通常、死滅したサンゴは海中にありますが、与那国島の風化サンゴは陸上で何万年も風にさらされ、多孔質な状態になっています。そのため、カルシウムやミネラルを補給する以外にも、乳化を促進する効果などがあります。海中から取ったサンゴは熱殺菌しないと使えませんが、与那国島のこれだけが、熱殺菌を必要としないサンゴ素材でもあります。

他にも、言い出せば数え切れない工夫を織り込んでいます。

つまり、プレマルシェのジェラートは、ジェラートという形をした健康食品なんです。ジェラートを作りたかったわけではなく、我々が20年間やってきたことをすべて活かした結果が、たまたまジェラートになった。同じ考えで、ジェラートの次にバーガーやピザなどのジャンクじゃない、ジャンクフードの提供も始めましたし、次はチョコレート作りを考えています。

―― 健康食品というと健康のためにちょっと我慢して食べるといったイメージもありますが、プレマルシェのジェラートはすごくおいしいですよね。
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

機能性と同時に重要なのが、「おいしい」ということです。一般的に、「ナチュラル」「ファンクショナル」「サステナブル」といった言葉がつく食品は、基本的に味がうすめで、あまりおいしくない。「おいしい」と言われるものも、「自称おいしい」なんです。おいしいと感じるためには理屈がいる。これが自然食業界の限界でした。

そうではなくて、理屈はしっかりあるけれど、それを知らない人が食べてもおいしいということを証明したかった。だから、イタリアで開催されるジェラートの世界コンテストに出場したんです。大手菓子メーカーや有名菓子職人を含め、何百人も出場するような大きなコンテストです。そこで、2年連続入賞を果たし、客観的に「本当においしい」ことが証明された。これは絶対に譲れない軸でした。

誰もが笑顔になれる場所

―― お店では、ジェラートの種類の豊富さに、迷いながらも楽しくなります。これだけのレシピはどのように考えているのですか?
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

自社でのモノづくりにあたっては、「誰もが笑顔になれる場所」を作りたいと考えました。ここには「Beyond “food barrier®”!」という、弊社で商標を取った考え方が軸にあります。

プレマルシェのジェラートには、植物性素材だけで作ったヴィーガン・ジェラートのレシピが多くあります。一方でミルクなどの動物性素材を使ったレシピもあります。たとえばピスタチオのレシピでも、完全植物性のものと動物性素材を使ったものと2つになる。レシピは増えてしまいますが、必要なことだと考えています。

先進ヨーロッパ諸国では、ヴィーガンやベジタリアンが増えており、専門店が増え、普通の店でも専用メニューがあるなど、対応が進んでいます。しかし日本では、専門店すらまだ少ない状況です。アレルギーのある方もそうですが、食事のマイノリティは、外食では「食べられない」ことで、朝食・昼食・夕食と一日三度も苦労するのです。

また、数少ない日本のヴィーガン専門店も、「誰もが笑顔になれる場所」ではありません。肉や乳製品を普通に食べる人にとっては、どうしても不満が残る場所になっています。そのため、ヴィーガンやベジタリアンと、そうでない人たちは、お互いに気を使ってしまい、気軽に一緒に食事に行くことができません。

しかし弊社が手掛ける店では、ヴィーガンもベジタリアンも、そうでない人も、一緒に楽しめるメニューを用意しています。しかも植物性素材だけで十分においしいので、ヴィーガン、ベジタリアンでない人も、「こんなにおいしいんだったら別に動物性素材がなくてもいいかな」となります。自然食に携わってきたこの20年の経験から、そういう入口にしたかった。理屈で相手を屈服させても、反感を生むだけです。

"It's not fashion, but REVOLUTION!"(それは飾りじゃないんだ、革命なんだ。)

―― プレマルシェのジェラートを食べてみると、本当においしいくて、かつ食後はさっぱりと後に残らない感じがします。
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

プレマルシェのジェラートは、植物性素材だけでしっかりおいしいのに、食後に残らずさっぱりしています。これは合成乳化剤を使っていないからこそ出せる食後感です。乳化剤というのはものすごく便利で、ほんの少し入れるだけで劇的な効果があります。だから、乳化剤を抜くのには、かなり苦労しました。

また、乳化剤を入れると味をはっきりと感じやすくなるため、社内で試食してもらったときに、乳化剤なしと乳化剤ありとで、後者のほうがおいしいと感じるスタッフが、半数近くいました。それでも、使わないと決断しました。現代人の高度加工品と添加物に狂わされた味覚に迎合しても、いいものは作れません。

そういったものをまったく使わないニュートラルなもので、劇的においしいと思ってもらうために行動しないのだったら、別に私がやる意味がないと考えたからです。ジェラートの次に手掛けたバーガーやピザで、化学調味料だけでなく酵母エキスも使っていないのも同じ考えです。

―― そういった発想でできたレシピというのが、他に真似できないところですね。
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

プレマルシェのジェラート作りは、レシピに基づいて計量や温度管理を正確に行えば誰にでもできるものですが、逆にそれらが一個ずれたらすべておかしくなる、これでないとダメという厳密な工程と素材の組み合わせがあります。これは、「こだわり」ではなく、「絶対的においしい、しかも誰にでも食べられる」という最終目的地に向かうためには、そうするしかないのです。

そのベースには、一般的な料理や菓子作りの世界とはまったく方向性の違う、プレマの20年で培ってきた知識と経験があります。たとえば、多孔質の与那国島の風化サンゴが乳化促進の働きをすることに気づけたのは、同じく多孔質の炭が界面活性剤に近い作用を持ち、洗濯に使えることを知っていたからです。あるいは、貝殻と炭と発酵液を煮込んで作る洗剤「マザータッチ」が、強い漂白剤や洗剤の代わりに、布ナプキンの洗浄に使えることを知っていたからです。

―― そう考えると、プレマが20年間やってきたことはずっと続いているんですね。
プレマルシェ・ジェラテリア ヴィーガンジェラート・マエストロ 中川

中川

こういった知識や経験が、ジェラートや、その他のモノづくりに活きています。だから、プレマはなにも変わっていないんです。

ジェラートが「おいしい」という入口から私たちの仕事に関心を持ってもらえたら、今までこういう世界に興味がなかった人にも、その奥深さに感銘してもらえるかもしれない。それはその人の生き方に関わるかもしれない。おいしくないと、そういうことはできません。一方で、昔からのプレマのお客さまには、単においしいだけではない、今回ご紹介しているような、深いところまで理解していただきたいと思っています。

本当のことを言うと、今話したのは、真実のごく一部でしかありません。実はもっと深遠かつトリッキーな仕掛けがあり、プレマルシェのジェラートはできあがっています。その話は、中川信男が話す、ごく小さな集まりでしか話していませんので、機会があればぜひお越しください。

ヴィーガン・ジェラート・マエストロ®の中川信男の講演会を開催します。

\インタビュアー/

卯の筆企画 河村 郁恵(かわむら いくえ)

ライター・編集者。本州最西端の県出身。大学では国文学を専攻。元プレマ社員だがメディア勤務を経て、独立。満員電車から解放されて今は鎌倉が散歩圏内。夫とデグー(アンデスの歌うネズミ)の二人と一匹暮らし。