ヘンプ(麻)の歴史と魅力、その効果

産業用から医療用まで、古来受け継がれてきたヘンプの力について探りました。

禁じられるほどパワフルだったヘンプ(麻)の力。ヘンプ復活が地球を救う可能性。

ヘンプ(麻=大麻)は、日本ではネガティブなイメージのある植物。
しかしそのイメージは、ここ数十年で作られたものなのです。
古来日本人はヘンプ(麻)を大いに活用してきました。
それがなぜ、禁じられた植物になってしまったのか。
日本とは逆に世界では、ヘンプの活用が進みつつあります。
ヘンプを栽培することは環境を改善することにつながり、
ヘンプを正しく活用することで健康に幸をもたらす。
そんな可能性を秘めたヘンプについてご紹介します。

ヘンプとは

ヘンプはアサ科の植物です。繊維素材として使われる「麻」には、現在以下のような種類がありますが、もともと日本に自生し活用されてきた、本来の麻はヘンプです。他の種類と区別するために、ヘンプは「大麻」とも呼ばれます。これは、ヘンプの成長が速く、非常に大きく成長することに由来しているといわれます。

亜麻 苧麻 ジュート麻 マニア麻 サイザル麻 ケナフ
Hemp Flax Ramie Jute Abaca Sizal Hemp Kenaf
(ヘンプ) (フラックス) (ラミー) (ジュート) (アバカ) (サイザル) (洋麻)
アサ科 アマ科 イラクサ科 シナノキ科 バショウ科 ヒガンバナ科 アオイ科

注連縄 日本人は古来ヘンプに親しんできました。紀元前8000 万年(約1万年前)の鹿浜遺跡(福井県)で麻縄が出土した例もあります。現代でも、注連縄(しめなわ)や鈴緒(すずお)、相撲で横綱が身につける化粧まわしなど神事に関係する場面や、七味唐辛子(※黒い粒は麻の実)など意外なところで活用されています。

ヘンプ ヘンプは、茎(繊維部分、木質部分)、種、葉、花穂、根といった全ての部位を、産業用途に活用することができます。たとえば、茎の繊維部分は衣料や紙、断熱材、プラスチックの原料となり、茎の芯部分は家畜の敷料や建築材料として、麻の種(実)は食品や食品油、化粧品、バイオ燃料などに利用可能です。

ヘンプ(大麻)はなぜ、禁止されたのか

「大麻」というと、日本では、禁じられたあぶないものというイメージが定着しています。大麻=ダメ・ゼッタイという刷り込みのなかで、ヘンプの魅力を語ること自体がアウトロー的な解釈をされることは否めません。
しかし一方で、伊勢神宮でいただく御神札(いわゆる”おふだ”)の正式名称は神宮大麻と称され、同様にお祓いで使う道具そのものを「大麻」(おおぬさ) と呼び、日本神道と大麻は切っても切れない関係があります。日本で大麻が禁止されるようになったのは戦後のことで、その経緯については立場によって諸説ありますが、一説ではアメリカの占領軍が日本人の精神的支柱であった神道の影響力を分断し弱めるためだったのではないかともいわれます。
実際、戦前から戦後しばらくの日本薬局方(医薬品の規格基準書)では印度大麻草として各種の製剤が紹介され、ぜんそく、鎮痛、鎮静剤として記載され、処方されていました。また同様に戦前は貴重な繊維および食糧素材として政府の推奨のもとで大麻の栽培がさかんでしたが、これらはすべて昭和23年7月10日施行の大麻取締法で一変します。大麻取締法の施行前には約19500あった麻農家が、法律の施行後3年で50にまで激減したともいわれます。大麻は、種や茎の特定加工品を除き、すべて危険な麻薬であるとして人々の生活から消えていく運命をたどるのです。

世界で進む、大麻の活用

世界で進む、大麻の活用 日本では厳しく取り締まられている大麻ですが、その大麻禁止を日本に持ち込んだアメリカでは近年、医療用途の大麻解禁が州単位で加速しています。
大麻から抽出される薬理成分は大きく分けて2つあります。THC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カナビジオール)です。THCには高揚感や感覚を鋭敏にする作用があり、精神的疾患をはじめ肺癌成長阻害や線維筋痛症の疼痛緩和に効果が示されています。CBDにはこのような向精神性がない一方、痙攣、不安神経症、統合失調症、炎症、嘔吐などの緩和と癌細胞の成長の抑制に効果があるという根拠が示されています。この一方、または両方を医療用に限り許可しようという動きが進んでいるのです。

ヘンプ それだけではなく、大麻全草を嗜好品として許可する州も現れ、コロラド州とワシントン州ではすでに解禁されています。アメリカに限らず、条件付き、条件なし解禁ともに多くの国で大麻の魅力が再発見され、タバコの規制強化とは裏腹に、合法化の動きが広がっています。

医療用に限らず、繊維、食品や美容素材としての価値や、建材からエネルギー問題解決への可能性など、栽培に農薬を必要とせず循環型素材としてきわめて優れた特性をもつ大麻には偏見の一方で強い注目が集まり始めています。日本でも、THCをほとんど含まない産業用大麻については特区での試験栽培が人気となっていて、一つの変化の兆しが見え始めています。

ヘンプによる環境保全

ヘンプ栽培は地球環境への負荷が非常に少ない、むしろプラスになる働きをします。

  • 農薬・化学肥料が不要 ヘンプは害虫に強く、栽培時に農薬・化学肥料を使用する必要がありません。
  • 成長が非常に早い 100〜120 日で3〜4m 程に成長し、採取することが可能です。雑草よりも早く成長するため除草剤を使う必要がありません。
  • 輪作が可能 麦やトウモロコシなどの輪作体系の中で栽培することができます。モノカルチャー (大規模単一栽培)による環境負荷の増大がありません。
  • 土壌が改良される ヘンプは根をくまなく張りめぐらせるため、収穫後の土壌はふかふかなになります。日本では昔から、痩せた土地を改良するために麻を植えてきました。 また、土壌中に溜まった硝酸性窒素濃度を低減させる効果もあるといわれています。
  • 不良土でも育つ ヘンプは少しの水で育ちます。年間降水量100〜200ミリの土地でも栽培できた事例もあり、砂漠の緑化に貢献できる可能性がるとして、注目されています。 それだけでなく、山腹地や荒地、塩分(アルカリ性)を含む土壌など、通常は農作物を育てるのに適さない不良土と呼ばれるような土地でこそ、良い麻が育つとわれます。そのため、用途がなく放棄されてきた土地の有効活用にもなると期待されています。
  • あらゆる土地で栽培可能 冷帯から温帯、熱帯まで、痩せた土地から肥沃な土地まで幅広い土地で栽培可能です。暖かい地方では、二毛作も可能です。

ヘンプの活用例

繊維素材として

麻袋 現在日本で「麻」として流通しているのは、亜麻(リネン)か苧麻(ラミー)で、そのほとんどをリネンが占めています。大麻(ヘンプ)を繊維として使用する場合には「指定外繊維」の表示となります。麻繊維は光沢と通気性があり、肌触りがよく、夏物の衣料品や寝具などに多く使われます。
ヘンプは、繊維に微細な穴が無数にある多項構造を持つことから、吸水性・速乾性、さらに調湿性に優れています。UVカット性や、抗菌性、消臭性なども調査が進んでいます。夏の快適さだけでなく、冬の温もりを与えてくれる製品も可能です。また他の麻繊維にも共通しますが、他の繊維に比べて丈夫で、湿るとさらに強度が増します。そのため、ロープや袋類、鞄などもにも活用されています。

ヘンプシード(麻の実)

ヘンプシード(麻の実) ヘンプシード(麻の実)は、近年スーパーフードとして注目されています。特徴としては、良質のタンパク質・脂質を適切に摂ることができ、ミネラルが豊富ということがあげられます。

ヘンプのタンパク質

タンパク質は、人間の身体を構成する三大栄養素のひとつで、酵素やホルモン、神経伝達物質などの原料でもあり、生命の正常な機能を保つために必須の栄養素です。
タンパク質はアミノ酸から構成されます。人間の身体を構成するアミノ酸は20種類あり、このうち9種類は体内で合成できません。この9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、食べ物から摂取しなければなりません。
アミノ酸を摂取する食べ物として、動物性タンパク質と植物性タンパク質があります。動物性は肉や魚、卵、乳製品、植物性は豆類や穀類などに含まれるのが一般的です。しかしこれらに匹敵する、むしろそれ以上のタンパク質を含むのが、ヘンプシード(麻の実)なのです。ヘンプシードには必須アミノ酸9種類がすべて含まれており、アレルギーの可能性も少なく、農薬や遺伝子組み換えの心配もほとんどありません。 ヘンプのタンパク質

脂質

脂質もタンパク質と同じく、人間の身体を構成する三大栄養素のひとつで、生命維持に重要な働きを担います。そして脂質の中にも、体内で合成することができず、食事から摂取する必要のある、必須脂肪酸というものが存在します。
必須脂肪酸には、オメガ6系脂肪酸(リノール酸など)とオメガ3系脂肪酸(リノレン酸)があります。この2つは、ただ摂れば良いというものではなくバランスも重要で、WHOや厚生労働省によると、オメガ6:オメガ=4:1の比率が推奨されています。
ヘンプシード(麻の実)から摂れるヘンプオイルには、オメガ3系脂肪酸であるリノール酸とオメガ3系脂肪酸であるリノレン酸の双方が含まれており、そのバランスも推奨されるものに近い3:1となっています。
さらにヘンプオイルには、トランス脂肪酸およびコレステロールが含まれていません。トランス脂肪酸には、天然の状態で牛乳や肉の中に微量に存在するものと、人工的に作られたものがあります。このうち後者のトランス脂肪酸は、特に人間の健康に害を与えるものとして、その危険性が指摘されています。コレステロールも、実は元々は人間の身体に必要なものなのですが、特に悪玉コレステロールは現代の食生活の中では摂取過多の傾向にあり、健康を害する原因となっているため、摂取を減らすことが必要です。

ミネラル

ミネラルは、身体を構成したり、その働きを整えたり、微量ながら人間の身体に必要不可欠な栄養素です。しかし人間の体内で合成することができないため、食べ物から摂取することが必要です。
ミネラルはさまざまな食品に含有されていますが、玄米より白米、黒糖より白砂糖のミネラル含有量が少ないように、精製するほどに減少していいます。現代人は精製された食品を食べることが多く、必然的にミネラル不足になりがちです。
ヘンプシード(麻の実)には、ミネラルも豊富に含まれており、また種子をまるごと食せるため、ミネラル摂取に有効な食品といえます。