|
羽鹿 秀仁(はじかひでひと)
サラリーマン、経営コンサルタント、青年海外協力隊の隊員として中米のニカラグア、パナマで5年間活動後、ネットワーク『地球村』というNPO団体のスタッフとしてアフガニスタン支援に3年関わり、2006年から三重県名張市赤目で有機農業を始める。年齢44歳、独身(嫁さん募集中)。
中川が10年前にインドのベナレスでお会いして以来のおつきあい。といってもプレマを立ち上げた時、羽鹿さんは海外に出ていて連絡がつかなくなっていました。ご帰国後たまたまプレマのサイトにたどり着いた羽鹿さんが、すぐに連絡をくださり、5年ぶりの再開を果たしました。
|
|
プレマ
経営コンサルタントや海外での活動といった経歴からは農業との接点はなさそうですが、農業を始めたきっかけをぜひ聞かせてください。
羽鹿さん
青年海外協力隊やNPOで中米やアフガニスタンで支援活動をしているときは仕事にやりがいを感じていましたし、精神的にも満足していました。災害や戦争、貧困で苦しんでいる人たち、特に子どもたちに支援をすることで彼等が笑顔になってくれることがとっても嬉しくて、どんなに厳しい環境下でも辛いと思ったことはありませんでした。ただ、日本に戻って普通に生活をしているとき、自分は食料もエネルギーも自給率ゼロ、にも関わらず、好き勝手に飲み食いして、エネルギーを使いまくっている。ある意味、途上国から奪いながら生活している。その自分が奪ったのもの一部を還元する形で支援活動に関わり、いいことをした気持ちになっていて良いのだろうかと疑問を感じるようになったのです。
とはいえ、ここで誤解して欲しくないのは、世界中の現場で支援している人たち、あるいはその活動を募金やボランティアで支えている人たちを非難しているわけではないということです。今、実際に苦しんでいる人たちを助ける支援活動はとても大切だし、それに支える人たちの善意は素晴らしいと思います。ただ、自分が本当にしたいのは支援をすることではなく、『支援のいらない世界を作っていくこと』なのだと思うようになりました。そして町中で何不自由なくしている自分の生活が、他の国の人から奪う、あるいは環境破壊という形で未来につけを残すことによって成り立っているのではないかと考えるようになってきました。
そしてまず自分が自分の力で食料を作る、言葉を換えれば奪わない立場に立った上で支援活動に取り組んでいくことが大切だと思い始め、農業を始めようと決意しました。
プレマ
奪わない立場に立つための農業デビューを果たした羽鹿さんが目指す農業とはどのようなものでしょうか。
羽鹿さん
まず、農業という言葉はあまり好きではありません。"業=生活の手段"として考えると、どうしてもお金儲けや効率と言うことが優先されます。それが環境や健康に悪いと知っていながら化学肥料や農薬の使用、果ては産地の偽装にもつながってくるのではないでしょうか。もちろん生活していくためにお金が必要だし、無料で農作物をお渡しするわけには行かないので対価としてお金をいただきますが、それよりも生産者と消費者がお互いに相手のことを尊重できる関係を作っていきたいと思っています。
例えば、残念な話ですが、農薬を何度も何度もかけて「こんな野菜、怖くてよう食わん」と言いながら市場に出荷して、自家用の野菜は農薬を使わずに作っている農家があることも事実です。消費者の側も有機・無農薬栽培の野菜よりも見栄えが良くて安い物を買う傾向があるようです(最近は少しずつ変わってきているようですが・・・)。このような、お互いに自分の利益しか考えない関係は望んでいません。生産者は『命を育む食べ物を作っている』という誇りと、『人に食べてもらっておいしいと言ってもらえる喜び』を感じられる。消費者は生産者が作った苦労を考え、感謝しながら食べ、そして生産者がかけた手間に見合うだけの金額を支払う。そんな関係を作っていくことが目標です。
プレマ
そのためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?
羽鹿さん
まず一人でも多くの人が直接的、間接的を問わず農業に関わってもらいたいですね。
物を作る大変さとおもしろさを少しでも感じることが第一歩なので、そのためには生産者と消費者の距離を近づけることが大切です。できれば生産の現場に来てもらって生産者と話をする、そして少しでも農作業を経験してみる、そんな関係が作っていければ良いですね。
もちろん、農村まではなかなか行けないという人もいるでしょう。例えば、正当な価格で農作物を買う、HPやメールを通じて情報を交換する、そんなことでお互いの関係を深めていくことができると思います。プレマさんのHPは、ただ物を販売するだけではなく、こうした情報の交流を上手く支援して、生産者と消費者の新しい関係作りをされていると感心しています。まさしく21世紀型の流通業です。
プレマ
ありがとうございます!さて、そろそろ今回の黒米についてご説明いただけますか。
羽鹿さん
できる限り昔ながらのやり方で作りたかったので、5月に苗床に籾を播いて苗作りから始めて、田植え、除草、稲刈り、はざがけまで全て手作業でやっています。手作業だからおいしいというものではありませんが、十分な労力と愛情をかけた自慢の黒米です。また、地主さんが昔から一切農薬も化学肥料も使っていない田んぼを借りることができたので、安全面にもかなり自信を持っています。もちろん味も素晴らしいと思っていますが、これは皆さんに評価いただきたいですね。
プレマ
農業一年生として、一番苦労された点はどんなことでしたか?
羽鹿さん
いろいろありましたが、やはり一番はイノシシの被害に苦しめられたことですね。赤目(三重県名張市)地域でも山が荒れ食料がなくなったこと、イノシシの生息域が道路で分断されたことなどで、イノシシの被害が急増しています。柵を作ったり、ラジオで音を鳴らしたり、安全灯を点滅させたりしましたが効果はなく、黒米の田んぼでも1割程度がイノシシにやられました。10月の中旬には「はざがけ」している稲を食べている子どものイノシシ二頭を追いかけたこともあります。
 |
 |
| いのししの被害 |
いのしし避けのフェンス |
私も動物愛護の精神は持っていますが、目の前で自分の作物が食べられていくのはとっても辛かったです。一度崩れた自然のバランスを取り戻すこと、人間と野生動物の共存の難しさを実感しました。
プレマ
最後に、プレマをご利用の皆様にぜひメッセージをお願いします。
羽鹿さん
私の作ったお米にご興味を持っていただき、ありがとうございます。ご購入いただければもっと嬉しいです(笑)。農業を初めてまだ2年目。これから自分の目指す農業を確立し、生産者と消費者の新しい関係を作っていきたいと思います。自分が農業をすることによって、一人でも多くの人が農業に触れ、食の安全性、環境問題等に関心を持っていただくきっかけになれば幸せです。機会があれば、ぜひ赤目に遊びに来てください。そして農業に触れてみてください。
プレマ
羽鹿さん、どうもありがとうございました。これからも美味しいお米を私たちに届けてくださいね。