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日本の夏、京すだれの名匠を見つけました
「京すだれ川ア」完全レポート
15年ではまだまだ、20年してやっといい葭を見分けられるようになる。
『京すだれ 川ア』の親方、川ア音次さんとともに
| ■この道40年、やっと良いもの・悪いものがわかるようになってきた |
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川ア音次親方
葦は節が太く、葭とは違うもだという。葦(アシ)は悪し(アシ)、葭(ヨシ)は良し(ヨシ)を連想するので、親方は葭(ヨシ)にこだわる
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川ア親方は15歳でこの道に入った。それから40年、今では京すだれの手編みをする職人の方が少なくなって、日本で4軒ほどしか本当にいいものを作れる人はいなくなったという。独立したのは26歳。
親方「その当時は良いも悪いも何にもわからなかった。それが自分が年いって、最近ちゃうかな、いいもの、悪いものが分かるようになってきたのは」
年輪がかもしだす厚みを感じる瞬間だ。
京すだれは高級品として知られ、現在も手作りのすだれのほとんどが京都で生産されている。
葭すだれ作りの難しさは、まず良材が見極められるようになること、それから柄合わせ。一本一本皮を剥き、磨いてきれいに柄を選定してから、編みに入る。
親方「どうしても自分の癖が出てしまって、柄が平均化してしまうんですわ。ランダムに平均に編むほうが簡単で、アットランダムに自然な風合いをだすのが難しいんですわ」

年季の入った親方の手。
一本一本節が個性をもつ葭をまっすぐにして編みやすく準備。
長年の年季と経験がないとできない。
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親方は手に持った葭を、節のところで何気なくポキッ、ポキッと折るようにして曲がりを修整している。これを『節折り』と言う。
親方「これが一番難しいところで、上手・へた、に10年はかかる」
間じかで見ていて初めてその技のすごさが伝わってくる。力を入れすぎたら折れてしまうし、修正の方向を間違えたら、まっすぐな編みやすい材にはならないであろう。知れば知るほど奥が深い。
親方「葭の色は特に(素人には)わからない、なかに素人の人で分かる人がいますが、そういう人は自分の家でいい家具を見ていて、知っている人です。そういう分かる人が、うちに注文をくれはるんです」
長い伝統に支えられて、この技術も親方に引き継がれたのだ。日本の貴重な伝統を大切にしたい。
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| ■高級葭(よし)について |
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良材の選定はたいへんだ。昔から上質の葭は琵琶湖の東岸で採れる葭だが、最近は琵琶湖の富栄養化で、葭が太くなり、すだれ用の細い葭は少量しか採れなくなくなった。
そこで親方は、中国天津から毎年1〜2トン輸入している。中国産はほとんど安価なすだれに使われるのが通常だが、中には琵琶湖産に劣らない良い品質のものが採れるという。毎年定期的に輸入し、その中からほんの一握りの良質な葭を選びだす。
葭の説明をするときが一番うれしそう。
青森から自分で買い付けて運んでくる
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表に止めてあったバンの中には葭が満載されていた。親方自ら青森まで買い付けに行ってきたというから驚きだ。送ってもらったら送料のほうが高くついてしまうので無理もない。
何の変哲もないヨシだが、見る人が見ると宝の山なのだ。
青森産も中国と同じように、気温が低く、水が澄んでいるため、細く、皮のしっかり巻いた葭がとれる。
たくさん買い付けるが、使用できる最上質の葭はほんのわずか。
買い付けから選別まで、親方は、この見極めに20年かかった。最近やっと自分で満足でき、楽しめる域に達したという。
まじめにコツコツと、自分に与えられた仕事をこなしていくことの大切さを改めて感じさせられた瞬間だった。

自動車に貼られていたシールが粋だ。簾(すだれ)の字の中にすだれの形がデザイン化されている
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高級品は琵琶湖の丸山産。透き通って色が貫けるような葭で、めったに採れないという。
さらに、その中でも最上品の『さび葭』を見せてもらった。寝かしておくと白く粉がふいてくるため、『さび葭』といわれる。なんともいえない渋さと気品を醸し出す。
これは皮付きのままお茶室に使われる。
そう言われれば、西園寺公望公のお茶室に、『さび葭』が使われていたのを思い出す。
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| ■これぞ宝庫!?資材置き場を拝見 |
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二階の材料置き場を見せていただいた。
「この部屋にいるのが一番好きなんです」
親方の顔がさらに緩む。材にによっては50年も寝かせたものがある。光が入らないようにし、温度・湿度を管理する。世界中から集めた、最上の、葭、蒲(がま)、萩(はぎ)、竹ひご、これら全部が自分の子供のように感じるのであろう。
選りすぐられた葭は、
暗室で熟成される。
平均したいい色に焼けるのに5年から10年かかる
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60年ものの最上品。
ほんものが分かる人からすだれの編みなおし依頼が入ると“いざ”出番だ。
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最近は色物の受注も多くなっているとか。
関東は黒系統、関西は朱が好まれる。
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親方が手に持っているのは細い高級品で、透き通った美しさを放つ。
この一本から使える部分は、はせいぜい60センチくらい
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| ■製造過程から見る良品の見分け方 |
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作業場に入らせてもらった。手前から奥まで、すだれを編む機械が並んでいる。どの機械も50年から80年も使われた年季ものだ。
親方「この機械がなくなったら、すだれ作りはもうできなくなる」
大阪にただ一軒、『ねじり編み』の機械をつくれる職人の方が残っている。
年齢は70歳。
すべての部品が手作りで、その方がいなくなったらもう機械は手に入らない。
川ア親方は後の代のことを考えて昨年一台新調した。
手前から3台目、男性の後ろに見える灰色のマシンがそれだ。
この新入りマシン、古い機械と並んで一所懸命働いていた。
古い機械のほうが、こなれて使いやすいと思ったが、やはり新品のほうがうまく編めるそうだ。 古いのはクセが出て、使いこなすのにテクニックが必要とか。
その半面、新しい機械は、材を差し入れるラッパ口や、押さえの爪が鋭すぎて商品にキズがつくのだ。 削ったり馴らしたりして、やっと最近使用に耐えられるようになったという。
機械といっても簡単なもので、一本ずつ葭を置き,ペダルをふむと糸が回転するというもの。
ふみ方で糸のしまりが調節できるらしいのだが、やらせて欲しいとはいえなかった。きっと難しいに違いない。
よい製品の見分け方の一つが、左右の長さのずれがないことだ。途中スケールで測りながら注意深く織っていく。湿度管理が大切で、親方は雨が降る日は仕事をしない。一徹な職人のこだわりだ。

炭すだれ用の管をラッパ口から機械に通しているところ
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数十年使い続け、木の部分がすり減っている。
糸の太さと質、糸巻きのおもり、どれ一つバランスが崩れてもよい製品にはならないであろう
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■新開発:炭すだれ−巧の技が現代素材に生かされる−
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岡山県はもともとビニールパイプの産地で、材料に一割ほど墨の粉を混ぜ込み開発したのが炭すだれだ。
硬すぎても、やわらかすぎてもダメ、炭を混ぜることによる微妙なざらつきと抵抗感があって、初めてすだれに編める。
炭の含有量が多いと穴があいてしまい、少なくてもだめ、それをパイプ状に均一に膨らんだ形に成型するまでが大変だった。試作の度に親方のところに運び、実に多くの回数試し織りを重ねながら、やっと昨年から満足のいく管ができるようになった。
自然の材の葭とはちがい、ビニール材のほうが当然編むのがやさしいのだが、かといって自動機械では決して編めない。ゆるんでしまうからだ。
何でもかんでも、外国製の安価なものに取って代わられてしまう昨今、ほんものの匠が織りなす製品は、外国ではまねができない。
『物づくりは国造り』
このキーワードがいろいろな取材を重ねるほどに重みを増してくる。
川アさんでは糸にも大変なこだわりがある。糸の途中に中継ぎないのが川アさんの製品だ。はじめから使うひもの長さを計算し、途中で糸を継がなくてよいようにする。
「途中に糸の中継ぎがない」
これが高級すだれを見るときのポイントのひとつだ。
糸もすべて自家で染めたものを使う。外注に出したのではどうしても微妙な色合いがでないのだ。
材料の風合いにぴったり合った色に仕上げるだけでも、試行錯誤が必要だった。
その後、撚りをかけ、製品にあった太さにする。
糸が素材の質にあいまって、初めてしっかり締まった製品が編めるのだ。

自家染色の糸を収納した箱
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糸を撚っているようす
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そしてついにできあがりました!
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