東京から約120km、熱海からは約50kmという近さの伊豆大島だが、黒潮が流れ込む海水はとってもきれいだ。その大島で太陽と風の力だけで自然海塩を製塩する「海の精」の工場を訪ねた。
応対してくれたのは、海の精株式会社の取締役生産長の寺田牧人氏だ。最初に訪れた元町工場は「赤ラベル」といわれる同社の製品を生産しているところだ。
「ここでは“煎熬(せんごう)”といわれる作業を行った塩を作っているですが、先にもう一つの間伏工場に行きましょう。そこでは海水をくみ上げる“採鹹(さいかん)”という濃縮塩水をつくる工程が見れますから。」
車で約15分、その工場は姿を現した。波しぶきがかかりそうな海際に建つ緑色のネットで覆われた巨大な建物が採鹹をする装置らしい。一見棟上も済んでいない建築途中の建物のようだが、これは「噴霧ネツト式立体塩田」といわれる装置だということだ。
「実は、ここにある建物や装置は全部自社内でつくったんです。建築士や工務店の人に頼んでも普通 の建築物と違うのでできないですよ。この装置は洗濯物を乾かすのと同じの原理で、くみ上げた海水を噴霧させ、太陽と風に少しでも多くあてる工程を繰り返すことによって海水の濃度を上げていきます。しかし、ここ大島の気候は雨も少なくないのでヒヤヒヤものです。というのも、雨によって濃度が変わってしまうからなんです。だから、常に4人体制で管理し、降り出したら夜中でもすっ飛んでくるんです。」
海水が濃縮された鹹水(かんすい)は完全天日塩を再現した温室採塩装置内の結晶箱に移され、この時期約2週間かけて塩を採取する。鹹水に溶け込んでいる塩類はほとんどが塩化ナトリウムだが、硫酸カルシウムや硫酸マグネシウムなども含まれている。時間が経つと結晶化(析出)し始めるのだが、そのタイミングにズレがあるため層にならないようにその間攪拌しなくてはならない。
こうしてできた塩を丁寧に数工程に分け検品し袋詰していく。この間伏工場で生産されている塩は「青ラベル」とうい製品だ。
このノウハウは今では、高知や天草、沖縄なども活かされている。
鹹水はトラックのタンクに積まれ最初に訪ねた元町工場へも行く。そこでは、蒸気式の平釜で丹念に炊きあげられた後、スラリー(という塩と母液が混ざった状態のもの)をタルに入れ冷却熟成する。ここで、あの豆腐などに使われる天然のニガリが析出されるのだ。