北の大地で感じた「自然」の本当の意味

「銀手亡」は、大地のエネルギーと生産者の愛情を浴びて元気に育った極上のお豆です!

「私は本当になにもわかってないです...。」
「自分を責めることはないんですよ。」

北海道北見の秋場さん一家、訓子府町の伊藤さん一家は
農薬不使用・無投入による無肥料自然栽培を通じて
私たち人類が積み上げ続けている過ちに警鐘をならし、
本当の意味での自然と人類の共存の必要性を訴えています。

プレマスタッフ山下が北の大地ですっごい体験してきました!

秋場さんの農場

2004年2月、埼玉の自然食品店サン・スマイルの松浦さんが弊社を訪ねてくださいました。
松浦さんは店舗経営だけでなく、全国の無施肥自然栽培を手がける農家を訪ね、規格外農作物の販売代行などを通して、すばらしい農法を貫く農家を力強く応援しています。その松浦さんに今回ご提案いただいたのが、北海道北見の秋場農園と隣町の訓子府町の伊藤農園で作られる「銀手亡」という白豆です。

「銀手亡」は、素材にとことんこだわっている高級和菓子店などで餡の材料として使われているそうです。もちろん餡作りだけでなく多様な料理に使えるのですが、その味はといいますと、自然な甘みは決してくどいものでなく、あっさりとしているのでお豆狂でなくてもついつい食べ過ぎてしまうほどなのだといいます。私も家で料理してみましたが、とにかく驚きです。やわらかくて、ほんのり甘くて、なんだかとっても幸せな気分になる不思議なお豆でした。

ところが、そんなにおいしいお豆が、実はほんの一部の農園でしか栽培されていないというのです。「一体、なんで?!」って当然疑問が生じますよね。

「銀手亡」は種まきから収穫までのスパンが長く、北海道のように暖かい期間が短い地域においては早く蒔きすぎると春の遅霜にやられ、かといって遅めに蒔くと今度は秋の早霜にやられる可能性が高いため、自然としっかり向き合ってその変化を敏感に感じ取れずしては栽培そのものが難しいこと、それに加えて「銀手亡」は他品種と比べツルが非常に長く成長するため刈り取り時に機械を使うことができずすべて手作業での収穫作業になり非常に手間がかかることなどから、各農家は「銀手亡」よりも扱いやすい品種を栽培しているのだそうです。

秋場・伊藤両農園はただ単にその扱いにくい「銀手亡」栽培に情熱を燃やしているだけではなく、一貫して農薬不使用・無肥料栽培という農法で農作物を育てているのだといいます。農薬を使わず、肥料も使わず、自然の持つエネルギーだけで立派なお豆やジャガイモ、人参などを栽培しているというお話を聞き、「これはぜひとも現地に出向いて直接お話を聞かなくては!」と強く感じ、その後山下はこっそりと北海道行きのチャンスを探るようになりました...。

とはいっても京都~北海道といえば随分な距離。「ちょっと飛んできますわ。」とはいきません。そうこうしている間に月日が経ち、いい加減に「銀手亡」ページを作らないことにはせっかく熱心にご提案いただいた松浦さんにも申し訳ないとあせり始めていた頃、北海道にある大高酵素工場の見学ツアーへのお誘いがきたのです。
「これはチャンスだ!!」ということで、しっかり大高酵素の工場を見学した後、ちゃっかり北見へぶっ飛ぶ計画を立てました。石原裕次郎記念館はいつか家族か気の合った友達と行ける日もくるだろうからということで、大高酵素小樽工場見学後の自由行動時間を利用して列車で新千歳空港に移動し女満別へ飛び、そこから北見の秋場さんに会いに行くことにしたのです。

農作物は無肥料でしっかりと育つのです!

小樽~女満別~北見

女満別空港着。体調はバッチリ

女満別空港着。体調はバッチリ

JR小樽築港駅から快速電車に乗り、新千歳空港へ移動すること約45分。車内で資料を読み直し、秋場さん像を思い浮かべる。秋場さんと面識がある弊社中川の話では大変寡黙な方だということだったが、北海道へ出発する前日に直に電話でお話した感じでは気さくな雰囲気で、テンポのよいお話をしていただけそうな印象を受けていた。

とはいうものの、実は今回私としてはめずらしく落ち着かない。
私の母の実家は農家で、子供の頃よくお泊りにいったのだが、叔父はというといつも畑仕事に忙しくしていたので居候身分は非常に居心地が悪かった。朝目を覚ますともう家にはいないし、日が沈む頃戻ってきても姪っ子の私になにを話しかけることもなくお風呂に入って夕食をとったらすぐに床についてしまうといった感じだったもので、田舎にちょくちょく行っていながらも農家の主人というのは近づきがたくむしろ苦手意識が強いまま今日に至っているのだ。

あー、緊張。「自分の兄のことをふみ君(私の兄はフミヨシといいます。)と呼ぶな!お兄ちゃんと呼べ!!」と怒鳴られた記憶がよみがえる。いまさらながらえらいトラウマをかかえていたことに気がついてしまった私。かといってUターンはできない。突撃あるのみ、だって私は突撃隊長なのだから(;;)。

秋場さん、伊藤さんとご対面

空港から北見行きのバスに載る

空港から北見行きのバスに載る

女満別空港着後、バスにて北見へ移動し、北見駅から歩いてすぐのビジネスホテルにチェックイン。時計は19時半をまわっている。「夕食を一緒に。」と秋場さんと伊藤さんにお誘いいただいているので、業務上の電話を数件入れた後すぐにロビーに下り、いよいよお二人と緊張のご対面。
にこにこ顔で「山下さんですね。」と声をかけてくださった秋場さんと、遠慮がちに後ろにいらっしゃった伊藤さん。幸いにも叔父とオーバーラップすることはない。どうやら構えることなくお話を聞けそうな気がしてきた。

ホテルから歩いて数分のところにある郷土料理屋さんへ案内される。こぢんまりしているが明るく活気のあるお店で、まずはビールでも飲みながら軽くお話をしましょうかということになった。とはいっても秋場さんは、思うところあってここ数年アルコールを断っているらしい。「寡黙な人だけど、飲ませたらきっとしゃべるに違いないから!」と社長命令が下りてはいるものの、にわか禁酒でもない方に無理矢理お酒は勧められない。いかがしたものか...、などと心配するも束の間、温かいお茶を飲みながらも「豆なんかはね、肥料なくっても育つんですよ。」の一声から興味深いお話が始まったのだった。

人類よ、落ちぶれるな

空港から北見行きのバスに載る

空港から北見行きのバスに載る

「肥料なんかなくても、育てることはできるんですよ。」と秋場さんはいう。育てることはできるけれど、手間がかかる。その上、手間をかけて育てても、収穫量はよその1/4~1/5程度。それでも秋場さんは今の農法が正しいとはっきり断言する。本来農家は、「環境を守り、人の命と健康に資する」という道義心を持って農業に従事すべきであるのに、現在の多くの農家は安定した収入を求め、本来の農家たるものの姿を忘れてしまっているのだという。

そもそも霊長類とは地球上の中で最も優れた生物であったのに、道具を持ち利便性を追求するようになった人類はすっかり万物の落ちこぼれと化してしまったという秋場さんの言葉が胸に刺さる。確かに人類は、まるで地球上のすべてのものは自分たちによって操られているかのごとく振る舞い、環境を破壊してはその場しのぎの手段で穴埋めをし、またそれが別の環境破壊を生み出すような真似を繰り返しているように思う。
農業に関しては、除草剤、殺虫剤などの使用により農地の管理が楽になり、化学肥料・有機肥料により安定した収穫量を確保できるようになった反面、地下水や人を含む生物の汚染など、過剰施肥などによる環境破壊は進む一方だ。秋場さんにいわせると、そういった利潤を追求した農法が土地を貧弱にしまっていて、結果農薬や肥料を投入しないと作物がまったく取れないような環境を作り出してしまっているにほかならないのだ。

人参も芽が出てきた。

人参も芽が出てきた。

実際に、貧弱になってしまった土地を、秋場・伊藤農園のような活力に満ちた土地にもどそうとした場合、土壌中の微生物を十分に増殖させ、残留農薬がなくなるまでには少なくとも5年の年月がかかるそうだ。除草剤なくしては無理だが農薬は使わなくなったという農家、機械を上手に活用しながら除草剤を使わず農薬不使用・有機栽培に切り替える農家など、なにがしかの改善を試みる農家も増えてはきているものの、「国内産」という言葉から消費者が連想する安心感を盾に、まだまだ各農家の意識改革はすすんでいないのが現状だという。

「他の農家からはすっかり相手にされなくなっちゃってね。意識改革を促してもだめなんですよ。」伊藤さんも大きくうなずく。はい、みなさん今日から無投入でいきましょう!とはいかないまでも、少しずつでもよいから皆が正しい方向へ向いて歩み始めてくれたらよいのだが、というのが秋場さん達の願いだ。「できることから少しずつ」という気持ちさえ持っていれば、いつか必ず大きな変化を促すなにかに出くわすことになるに違いない、植物自身が大切ななにかを教えてくれる日はきっとやってくる。人類が万物の霊長たる威厳を保ってさえいれば、植物の意志は必ず反映される。そういう秋場さんだが、実際はというと非常に残念ではあるが秋場さん達が農家の意識をかえるのはもはや無理だというのだ。

なにもかも植物のお望み通りに

癒しの納豆

「癒しの納豆」

「いや、口を挟む機会がなくて...。」と伊藤さん。実は伊藤さんは少し違ったアプローチで秋場さんと同じく無肥料栽培による自然農法を貫かれていた。秋場さん曰く、「伊藤さんは2年ほど、まわりに生えてくる草をまったく抜かずにして見事に農作物を育てたこともあるんですよ。」
一体どうして除草しなかったのか?また、どうして除草もせずに、野菜達は元気に育ったのか?伊藤さんに尋ねると予想もしなかった答えが返ってきた。
「植物の言うとおりにしたまでのことなんです。」話を聞くとどうやら伊藤さん、植物とのコミュニケーション能力を持ち合わせているらしい。「自分自身でも、どうしてこんな風になっちゃったのか理解できないんですけどね。」とあっけらかんと話す。なんでも会話はできないのだが、ここ数年真っ正面から植物と付き合っている内に植物がYesかNoの二択の回答をしてくれるようになったのだそうだ。植物がこうして欲しいというなら、そのようにしてあげるよりほかないというのが伊藤さん式農業なのだ。

伊藤さん、秋場さんは除草といわない。雑草とも呼ばない。むしろ役草と呼んで、必要が生じた場合は、「ちょっとごめんね、退いてやってね。」と声をかけながら草を退けているのだという。
ふと光合成の原理を思い出した。人類が地球上に存在しているのは植物の光合成のおかげであることを考えると、当然すべての植物にたいして、それが農作物であれ、自然に生えてくる草であれ、最大限の敬意を払うべきなのだ。

「癒しの納豆」一粒食べる前35、食べた後40。怪力山下の変化は序の口らしいです。しかし、驚き!

「癒しの納豆」一粒食べる前35、食べた後40。怪力山下の変化は序の口らしいです。しかし、驚き!

実際に、貧弱になってしまった土地を、秋場・伊藤農園のような活力に満ちた土地にもどそうとした場合、土壌中の微生物を十分に増殖させ、残留農薬がなくなるまでには少なくとも5年の年月がかかるそうだ。除草剤なくしては無理だが農薬は使わなくなったという農家、機械を上手に活用しながら除草剤を使わず農薬不使用・有機栽培に切り替える農家など、なにがしかの改善を試みる農家も増えてはきているものの、「国内産」という言葉から消費者が連想する安心感を盾に、まだまだ各農家の意識改革はすすんでいないのが現状だという。

さらに、先ほどからお二人は農作物にも「さん」をつけて話していることに気づいた。「トマトさん」「タマネギさん」 「秋場さん」に「伊藤さん」。みんなみんな、敬意を払いながら共に共存していくべき地球上の仲間なのだということ。「僕らはみんな生きている~...」という歌があるが、子供の頃声高らかに歌っていたあの歌詞の意味をこの年になってを改めて考える機会に巡り会った私は、本当になんて幸運なんだと感じずにいられなかった。

大地のエネルギーこそが健康な植物を育むという事実

農家は継がないと決心して東京へ

にこにこ笑顔の秋場さんと。

にこにこ笑顔の秋場さんと。

翌朝はホテルにて軽く朝食をとった後、秋場さんのお迎えを待つ。本日の予定は秋場さんと伊藤さんの圃場見学。午後2時前には北見のバスターミナルに戻らないといけない。まだまだお話を聞き足りないし、農場も見ていないので気ばかり焦っているところへ秋場さんがにこにこ顔で到着。「今日は真夏並に気温が上がるようですよ。」半袖のTシャツにしておいてよかった...。

広大な秋場農園(の、ほんの一部)

広大な秋場農園(の、ほんの一部)

とりあえずは伊藤さんのお宅に向かいましょうということになった。移動中も秋場さんのお話をたくさん聞ける。秋場さんのお話を聞くと、ココロがどんどん浄化されていくのと同時に、自分を含む人類が依然繰り返す過ちに胸が痛くなる。このあたりがとても複雑だ。

伊藤農園のかかし、伊藤さんそっくり。

伊藤農園のかかし、伊藤さんそっくり。

秋場さんは高校卒業と同時に東京の大学で経済学を学ぶために北海道を後にした。二度と戻らないつもりでの上京だったという。授業料を払うためにアルバイトに明け暮れたが、ふとそんな学生生活に疑問を持ち、2年がすぎたところで突然休学。アルバイトでためたお金を握り、飛び立った先はヨーロッパ。スイスの山奥での農作業のお手伝いを数ヶ月して得たお給料を資金にヨーロッパを鉄道でまわった。当時の旅先での経験が秋場さんの決心を変えたらしい。大学卒業後は家業の農園の経営を手伝うべく、大学で知り合った現在の奥様を連れて実家に戻ることにしたのだそうだ。

当時は、広大な秋場農園の一部で秋場家が自宅で消費する分だけに限定して試験的に取り入れていた無肥料無投入の自然農法。その農法に完全に切り替える決断をしたのは秋場和弥さん自身だった。農園の一部ならまだしも、広大な土地すべてにおいて自然農法を採用するとなると、おそらく並大抵の決断と苦労ではなかったろうと思う。それでも、「肥料はなくとも農作物は育つ」という事実を知っている秋場さんは、「未来の子供達へ安全で美味しいものを提供するのが農家の定め」だと自分自身や家族に言い聞かせ、みごと24ヘクタールの圃場すべてで完全無肥料栽培を実現するに至った。

「草を見るのもイヤだと思う時期がありましたよ。」毎日毎日続く除草作業に、心底雑草を恨んだこともあるという。そんな中、偶然にも隣町で同じ農法をしている伊藤さんの存在を知る。今からわずか3年前のことだ。伊藤さんは元々有機栽培をしていたが、秋場さんと知り合う2年前から無肥料栽培に切り替えていた。真面目に取り組むが故に肉体的・精神的に追い込まれていた秋場さんは、当時草をまったく抜かずにいる伊藤さんの農法に愕然とする。「秋場さんはアリさんで、僕はキリギリスさんですからね。」という伊藤さんだが、そんな伊藤さんの存在が、確実に秋場さんの心の支えとなっていった。そしてその頃から秋場さんもまた、農地に生える草を雑草と呼ばず役草と呼ぶようになった。

「とはいってもやはりなかなか直接あっていろいろな話をする暇はなくてね。今回の山下さんの訪問のおかげで伊藤さんともゆっくり話ができてよかった。」といってくださる秋場さん。種まきの時期で、間違いなく多忙だというのにも関わらず、こちらの都合で勝手に訪問予定を告げ、強引に承諾を得てしまったようで後ろめたさを感じていた私に、なにげないひと言をかけてくださる。実に心の優しい、素敵な方だ。そんな優しい秋場さんの愛情を浴びるように育った農作物は、それは立派に実りを迎えるに決まっている。

植物と共存する伊藤さんご夫妻

伊藤さんと、奥様の喜代美さん。

伊藤さんと、奥様の喜代美さん。

伊藤さんのご自宅に到着。「ちょうどね、この辺りですよね。」と秋場さんが裸の土が見えているだけでなにも植えられていない一角を指さす。そういえば昨日、もうひとつ興味深いお話を聞いていた。なんでも、この土地を背にデジカメでお子さんの写真を撮られた際、なにも植えられていないはずの土地に花が咲いている写真が撮れたのだそうだ。その写真は伊藤さんのご自宅の居間に飾られていた。確かに背景はお花畑だ。さらにお話を聞くと、まさしくこの年の春から、無肥料栽培へ農法を切り替えられたのだという。写真を撮ったのは7月だから、伊藤さんの新しい試みを大地が喜んで受け入れてくれたとでも説明すればよいのだろうか...。

トマトとタマネギが芽を出した鉢。

トマトとタマネギが芽を出した鉢。

伊藤さんのご自宅の居間に、植木鉢の中に大きく育った2本のトマトの木があった。まだ実はなっていない。これもまた驚いたことに、その隣に置いてある植木鉢の土にある日突然芽を出したのだそうだ。勿論種をまいた覚えなどない。なにかの偶然に違いないと思っていたら、今度は同じ鉢にタマネギが生えてきたのだという。「蒔かない種が生えたんですよね~。」と笑い話にされる伊藤さんと、「伊藤さんのお宅に来る楽しみのひとつなんですよ」とその生長を興味深く観察される秋場さん。本当に絶妙のコンビネーションだ。
で、トマトの木はというと大地に植えていないため根が育たず、心なしか弱々しい。しかし伊藤さんが室内に置いているのには訳があるのだろう。答えに検討がつくからあえて聞かなかったが、察するにこのトマトの木がこの場所を選んだのに違いない。

伊藤さんお手製の郵便ポスト。

伊藤さんお手製の郵便ポスト。

現代の科学では認められていないが、エネルギーの大きな大地では、元素転換はしょっちゅう行われていると伊藤さんは説明する。「蒔かない種が生えた」ことは確かにめずらしいのであるが、品種が突然変わったなどと言うことはしょっちゅう体験されているらしい。通常元素転換は高圧高温でしかできないと言われているのだが、結局今の社会の中で常識だと思われていることはすべて、必ずしも事実であるとはは限らないのだ。

「うちのかみさんは、時々植物と同調して気持ちが乗り移ってしまうんです。」と伊藤さんは奥様を見る。
人類も植物もみんな生きているものなのだから、無駄なものはひとつもないのだということを身をもって感じていらっしゃるのが伊藤さんの奥様、喜代美さん。土の中にいる微生物は、人の心の動きも敏感に掴み取るから、荒れた気持ちで農作業に出てもろくな事はない。愛と感謝の気持ちを持たなくては作物は育たない。それが、喜代美さんがこれまでの経験から理解したことだ。
喜代美さんは昨年体調を崩された。その後、畑のトマトがみるみる弱っていく。弱っていくトマトとは反対に喜代美さんは元気を取り戻していったのだそうだ。トマトが身代わりになってくれているのを感じたとおっしゃる喜代美さんもまた、植物の声を聞き、常に植物に敬意を払われている。「ありがとう、と感謝の気持ちをもって、いつも声をかけながら植物のお世話をすると、植物がそれに答えてくれて元気に育つのですよ。植物を育てるというよりは、育つお手伝いをしているのです。」とおっしゃる喜代美さん。他の畑で、農薬・肥料を浴びてハウス栽培されている植物たちはというと、もはや自分たちの力で生きているという自覚がない。人間によって生かされている植物は、当然ながらエネルギーなど持ち得ないから、人の心や体調の変化など知るよしもないのだ。

喜代美さんのお話を聞いているうちに、どんどん自分が小さく思えてくる。「自然は本当に偉大なんですね。私は本当になんにもわかってないです。」私の情けない言葉に、「そんな風に、自分を責める必要はないんですよ。」と優しくおっしゃる喜代美さん。思わず目頭が熱くなった。「こうでなくちゃいけない。という凝り固まった考えはよくないんです。最低限のところで、マイナスを取り除く努力をまずはしていくことから始めていけばよいんです。」と喜代美さんはいう。

伊藤さんご夫妻にしてみても、もともとは他の農業を営む人々と比べて、ほんのちょっとした意識の違いがあったにすぎない。しかし、そのちょっとした意識がきっかけで現在の農法にたどり着き、そしてその農法を通して、いまや植物や大地の気持ちがわかるまでになった。人類が自然界の力を享受できる体制は整いつつあるが、気がつかないでやり過ごしていることもあるだろうから、もしかするとまだまだ植物たちが求める状態のいくらにも到達していないのかもしれない。「それでも、かろうじてレールには乗っかったかな」とおっしゃる秋場さん、そして「ここ数年でこの違いですから、これから10年先だったらいったいどんなことになってるのか、自分自身でも楽しみで仕方ないですね。」と言われる伊藤さんの笑顔が、とてもまぶしく見えた。

汚染のすすむ北の大地

伊藤さんのお宅でお昼をご馳走になる。食卓に上がる食べ物はすべて大地のエネルギーに満ち溢れている。

伊藤さんのお宅でお昼をご馳走になる。食卓に上がる食べ物はすべて大地のエネルギーに満ち溢れている。

伊藤さんのお宅でまたまたいろいろと興味深いお話を伺った後、圃場に向かう。途中は右も左も果てしなく広がる農場だ。私のように都会(と秋場さんに言われて照れた滋賀県民山下)から来た者にしてみれば、一見するとただただ雄大で、工場なども見あたらないし、こんな広々とした大地で採れる農作物はどれもさぞかし美味しくて体によいものだろうと信じて疑わないのだが、実際はというと、過剰施肥などによる地下水汚染が進み、この辺りの地下水は、飲用として許可されていないという。その汚染の進み具合は尋常ではなく、井戸水よりも塩素処理された水道水の方が安全だという現実を、「水飲み百姓どころか、もはや水も飲めない百姓状態だね」と秋場さん達は嘆く。すでに子孫に残せない土地になっているというのに、それでも農家は現実から目をそらす。それがどうしようもない現実なのだ。

この一見限りなく美しいと思える北海道の大地が、そんなふうに汚染されているとは...。中国産の農薬問題が取り沙汰された直後、やたら国内産がもてはやされるようになったが、一体消費者は、なにを持って国内産の安全性を信じるのか。国内産であればだいじょうぶという安直な考えの根拠など、どこにも存在しないのだ。 蛇は、有精卵か無精卵かを遠くからでも見分ける。生命力のあるものはある種のオーラを発しているのだ。オーラが見える蛇は、当然有精卵に飛びつく。ところが不幸なことに、私たちの多くは(私も含めて)、オーラは見えない。見て判断ができないのだから、正しい知識を持って、正しい情報を頼りに正しい選択をしていかなくてはならないのだ。

夏になると、近隣の水田などでまかれている除草剤などのニオイが辺りに漂う。気化した物質はどんどん上昇し、大気をも確実に汚染する。
「すごくよい環境で、いいですね~。」という言葉がつい出そうになる景色なのだが、実はそうではない。なんとも複雑な気持ちで車中から外の景色をながめた。

大地のエネルギー溢れる秋場農園・伊藤農園

雨の後土が固まって芽が出てこない。

雨の後土が固まって芽が出てこない。

秋場さんと、伊藤さんそれぞれの圃場を拝見。いずれもとにかく広い。まさかこの広い農地で除草剤なしに作物を作っているとは...。「草を見るのもいやだった」時期があっても当然だと大いに納得してしまった。毎日作業に出るが、あまりの広さに3,4日足を運べない圃場も当然あるらしい。 種まきが終わってちょうど芽が出だした時期だったので、まだ青々とした畑はみることができなかったが、地面から顔を出した芽はどれも、小さいながらもとても力強くたくましく思えた。 秋場さんの圃場に着いたとき、ちょうど奥様と息子さんが作業中だった。種まきのあと降った雨で土が固くなり地中の芽が顔を出せずにいるらしく、手作業で一ヶ所ずつ丁寧に土を掘りおこしていた。この辺りの土は粘土を多く含み、雨が降ると固まりやすいのだそうで、心配になって見に来てみたらやはり芽が出ていなかったらしい。今日やってしまわないと全部だめになる。会話には険しいものはなかったが、内容的にはどうやら大変な状況だったように思えた。(本当にお忙しい時期にお邪魔してしまい申し訳ありませんでした!)

自家採種による種芋。

自家採種による種芋。

秋場さん達は自分の畑で育った作物から種を取り、冬の間に春の種まきの準備をする。自家採種・無肥料だから、自分の畑には外部から一切のものを持ち込まれない。それでも形状が規格外だと、それだけで流通からはじかれてしまう秋場農園・伊藤農園の野菜達。その傍らで北海道の特産物だと言われているジャガイモやタマネギ、ビートなどは農薬や化学肥料を大量に浴びて化け物のようになって全国に運ばれていくのだ。

伊藤さんのご自宅の前にて。

伊藤さんのご自宅の前にて。

経済的な安定を最優先している農家が自発的に改革の道を歩むことはまずあり得ない現状、かくなる上は、実際に農作物を口にする、また口にする農作物を選ぶ権利を持っている消費者がこれらの事実と向き合い、正しい選択をしていただくしか道はない。「急がばまわれ」というのが正しい表現なのかわからないが、直接農家に理解を求めるよりも、消費者が生産者を選ぶようになれば、各農家も目を覚まさざるを得ない日がいつかやってくるだろう。生産者任せでなく、消費者が自然との調和の意味をしっかりと理解していくことで、万物の霊長としての威厳をなんとしても取り戻さなくてはいけない。さもなくば、人類はこの先どこまでも落ちこぼれていくしかないのだから。

「私たちのように、ギリギリでも(自然農法を)やっている農民が全国にわずかでもいれば、自然界の中に存在する、健康で安全で美味しい作物を作るエネルギーをきっと検証してもらえるでしょう。その指標農場として、貧乏でもやっていきなさいという天職使命なのかなという思いでいます。」という秋場さん。カッコウが鳴いたら種をまいてもよいというらしいが、今年はカッコウが鳴くのを待たずして種まきをした。そして種まきをした翌日にカッコウは鳴いたのだという。自然の声と大地のエネルギーを体で感じ取る秋場さん、伊藤さんは、本来の農業をただ実践するだけでなく、その先にあるものを見つめ、地球環境の浄化、そして人々の心の浄化を常に追求し続ける。

秋場さんからのお手紙(2004年5月31日付)

農業鉄骨倉庫が押しつぶされ、被害総額10億円という北見開拓以来の爆弾低気圧と名付けられた豪雪に見舞われ、いつ春が訪れるのか心配致しましたが、例年より一週間ほど遅れて、5月1日から始まった種まきは5月13日、21日と節目節目に恵みの雨にも助けられ、順調に推移し、サンスマイルさんのご尽力により全国の皆様にご愛好頂いております総面積5町歩の銀手亡の最終種まき3町歩も28日終了いたしました。昨年度は6月5日の春の遅霜で、本沢地区1.5町歩発芽直後全滅してしまいました。一昨年秋の早霜で、品質劣化を招いたため、昨年は種まき日を少々早めたための影響もありましたが、早まきの効果は本沢地区以外の他の地区のできが上々であらわれました。日々天気予報には細心の注意を払い、大地に立ったときの感覚で流れるように作業行程を決めてまいりますが、29日雨予報の中、春の遅霜と秋の早霜のはざまで、最終臨界日と判断して当日は、日の出前の4時過ぎに圃場に到着し、東天に上り始めた日の出に、日本古来の天津祝詞を奏上し、種まきに入った次第です。時同じく秀さんも当日種2町歩まかれ、流通のキーマンの松浦さんの留守番電話にも連絡を入れ、共に祈って頂きました。結局、13日、21日に続く恵みの雨は、本日31日なり、発芽の為には最も理想的な展開となりました。耕起して、播種する際、好天と圃場の乾燥が豆類、人参等出発点が小さな種からの作物にとって発芽の為に大変重要になってきます。勿論、恵みの雨は絶対要件ですが、採種時に土壌かくはんの際の、下からの湿り気が乾燥するには丸一日かかります。乾燥しないうちに大雨等にたたかれますと、土がコンクリート状に固まり、小さな植物の種が発芽するのに大変困難となります。このような観点から、28日播種、本日31日しみ入るような降り方の恵みの雨は、銀手亡にとって最高の展開となりました。

25日~26日、プレマの山下さん、秀さんと話し合いの場で、無肥料栽培の最大目標は「自然界こそ、生成化育の力の根源であるということを証し立て、万物の落ちこぼれになりかかっている人類の、万物の霊長への回帰の為の一助となれば...。」というようなやり取りの中、全国の皆様に発信させて頂くための銀手亡の最終まきつけに、秋場農園・伊藤農園とりかかりますと約束した意気込み通りの出発となりましたが、春の遅霜、秋の早霜はじめ様々な天候の試練を乗り越え、豊かな実りとなさせて頂けることを記念して、春の種まきの報告させて頂きます。

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