竹布メーカーであるナファ生活研究所の相田雅彦社長が突然切り出したのは、ボディタオルなど竹布のベーシックアイテムが完成したころのエピソード。
松山での展示会のため、相田社長は東京から車を走らせ、フェリーで四国に移動。さらに松山に向かって高速道路を走っていたところ、その不思議としかいいようのない竹との対話を体験したというのです。
目の前のトンネルを覆い隠さんばかりに竹が茂っているところに差し掛かったとき、何気なく、
「あんた、なんでそんなに茂る必要があるの?」と竹に向かって問いかけた相田社長に、なんと竹から返事が!
「あんたら人間は、ここまで茂らないと気がつかないからよ」
相田社長は大変驚きながらも、「どういうこと?」と聞き返すと、竹はさらに続けます。
「私は言葉が話せないから、あなた達愚かな人間に知らせるためにはこうするしかないでしょ。あなた達が抱えている問題のいくつかは、私を利用すれば解決できるのよ」
そういえば昔から竹は農作業に不可欠で、「田んぼの隣は竹林」というのが当たり前だったのに、近年になってからはそんな風景は見ることがなく、むしろ現代社会では邪魔者扱いされることが多い。実際にこの日本国では竹が資源として認められておらず、そもそも竹についてほとんど何も把握されていない・・・。
けれど、竹との会話という不思議な経験をした相田社長は、「どうにかして竹を有効に使ってあげられないものか」と、竹の総合利用を検討しはじめたのでした。
「大きく育った成木の竹を切ると、翌年の初夏には必ずタケノコが生えてきます。つまり空から見ると数はかわらないのです。このように商品として世の中に出しているのに資源は減らない。農薬散布も不要、肥料も不要で手間要らず、ただ切ってあげるだけでいい植物なのです。乱伐は問題ですが、しっかり管理をして成木だけを切るようにすれば資源は絶対になくなりません」
竹でできた繊維はまるでシルク同様に光沢があって柔らかいのに、シルクのように原料の確保に手がかかることはなく、私たち人間は自分で勝手に伸びてくれる竹を切って活用するだけ。ということは、「将来的にはコストを下げられるのでは?」さらに、「生産に大量の農薬使用を伴う綿の代替繊維として世界に定着させていけるのでは?」と竹の可能性に対する相田社長の思いは駆けめぐります。
そんな中、まずは製品の強度を高める目的から自分たちで竹を植え、パルプ工場も運営し始めた矢先の2001年、分析センターから返ってきた抗菌力の評価結果を目の当たりにして、相田社長はついに「竹の本当の役割」を見いだすに至りました。
想像をはるかに超えた驚愕の抗菌力を知ったとき、「どうして天然の繊維でそれだけの力があるのか」と考え込んでしまったという相田社長。抗菌剤を後で加えて抗菌力を持たせている繊維は世の中にたくさん出回っていますが、数回洗濯したらだめになってしまうそれらとは、竹繊維製品はまったく異なるのです。
試験結果を眺めながら、今一度、竹の役割をじっくり考えてみた時、一つの言葉が相田社長の頭に浮かんできました。
『人が最も痛み苦しんでいる時に、そっと寄り添ってただ快癒を祈る一枚のガーゼ』
「なぜ、竹がこれだけの抗菌力を持ち、どういう役目を担っているのかが明確になった瞬間でした。あのとき私に語りかけた竹が、「ほらね」といってるのが聞こえるようでした」
適切な治療を受けていれば大事には至らない怪我などであっても、肝心の医療設備の不足のために尊い命を落とす人々が世界中にたくさんいます。そのような現場で現在使用される綿のガーゼが、竹のガーゼに置き換わるとすればどうでしょう。すばらしい抗菌力を備えた竹のガーゼなので、人間が本来持っている自然治癒力で皮膚膜が再生するまでの間、菌が入り込んで感染症になることがないように傷口を守れるはずなのです。
とはいえ国内においてもガーゼは保険が適用されないため、その費用は病院持ちになります。つまり価格が高いと病院に採用してもらえないのです。しかしながら、ある大学病院の院長からは、価格が綿のガーゼに近づけば、間違いなく世界中の医療現場で竹繊維に置き替わるだろうとお墨付きをもらったそうです。
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医療現場の現状
現在、医療現場で主として使用されているガーゼは綿です。綿は衣料品を始めとし、私たちの生活の中で最も身近な繊維です。しかし、聞くところによると全世界の農薬使用量の多くは綿の栽培に使用されているとのことです。ショッキングな話ですが、それだけ綿の栽培には手間がかかるということでしょう。 無農薬で栽培されたオーガニックコットン製品が非常に高い価格であるにも関わらず、市場に受け入れられているのも、薬品漬けになっている通常の綿製品にアレルギー反応を示す人が多くなっているということだと思います。 そして、皮膚に対する親和性ということでも、直接肌に触れる部分には静電気を生じる合成繊維は使用できないので、コストの面からも天然繊維の綿が使用されています。
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コストを下げるためには、二つの方法があります。ひとつは農民から搾取し、中間業者をたたいて安く流通させる。でもそれは、竹繊維という神聖なものを扱う人間のやり方とは思えません。相田社長が挑戦しているのは、自ら竹を育てて農民に適正な報酬を支払って管理を委託し、原料のパルプを自分たちで作ることで工程上の効率化を図るというやり方です。
繊維の強度を上げる目的と、ガーゼのコスト削減のため、自分たちの手で出来る限界まで効率を上げる努力をしています。製造工程上出てくる副産物も一切捨てることなく再利用して、別のものに生まれ変わらせようとしています。そしてトータル的に繊維の価格を引き下げるのが目的です。これが、ナファ生活研究所の目指す『竹の総合利用』の全容です。
(以上ナファ生活研究所代表取締役相田雅彦氏インタビューより抜粋。全内容は音声で配信中>>)
近年中に竹布ガーゼを世界中のすべての医療現場に届けたい。その足がかりのひとつとして、あるいはこれまでの歩みの成果として、竹布「慈布シリーズ」は誕生しました。
竹布の素晴らしさを直接お肌で感じていただくために開発された「慈布」シリーズ。三重織りにした竹布ガーゼが肌触りのソフトな軽い薄手のタオルになりました。お肌にのせただけで表面の水分を素早く吸収するため、「拭く」という動作が要らないのも大きな特長です。お肌への負担を最小限に抑えられ、お肌の弱い方にもおすすめ。もちろん天然抗菌効果で臭いを抑えるので、いつでも気持ちよく竹布のやさしさを実感できます。
「竹布のガーゼを世界中に届けたい」という相田社長の思いは、私たち誰もが参加できる大きなプロジェクトであるともいえます。世界の平和を願いながら、自らのこころとカラダも癒される。そんな素敵な社会貢献、ぜひとも多くの人々に伝えていきたいです。(山下喜代己)