|
松の赤ちゃん
アイナ株式会社 代表取締役社長 北村惠子
酸性雨と炭の研究で知られる宮下正次先生のご指導のもとに群馬県の赤城山のふもとを訪ねました。ブナや松たちの「死を前にして抗するすべを失った壮絶な姿」が山一面に広がり、あまりの痛ましさに息をのみます。新緑のまぶしい命の息吹があるものと思っていました。しかし、そこには沖縄本島の海でみたサンゴと同じように、松の林から力なく、「たすけて〜たすけて〜」と呼びかける声が聞こえてきます。
「この山にはもともとは、ブナの原生林がひろがっていたでしょう」と宮下先生。山の中腹にその昔を偲ばせるブナの大木が3メートル余りの堂々とした姿でたった一本だけ残っています。宮下先生が仲間たちと見つけたそうです。
山道を歩きながら、甘いかおりの木の葉、マンゴウの香りや踊り子草、大山桜など自然の息吹に触れさせていただきました。
松の木の根元で先生は立ち止まり、「ああ〜、これをみてください。」松の2センチほどの赤ちゃんが3本立ちあがっています。松葉の上半分は緑色、下半分は茶色です。「この土が酸性土壌で、この松も生きられないんです」
東京の大気汚染は埼玉まで届いていくと聞いたことがありました。宮下先生は、赤城山が関東平野のびょうぶの一つとなっていてこの土地に酸性雨を降らせていると指摘されました。助けを求めている松の姿に、私たちがしてきてしまった誤りの大きさをどれ程悔いても足りません。
先生は「“木”のほうが“人間”よりもはるかに先輩で、1,000年2,000年と生きるんですよ。それがこのように立ち枯れて、子供が育たないのですから・・」とおっしゃいます。
イギリスにギネスブックに載った「ブナの並木」があるというので、行って来られたそうですが、この山と同じように、ブナの子供は全滅とのこと・・・。そこの土壌は、[pH3]の酸性土壌で、とても生きられるような環境ではありません。ギネスブックの掲載から外れたそうです。
せめて土壌は「pH6」位でないと・・・宮下先生は現地に行って真実をみて測定して貴重な真実のデータをお持ちです。どんなにいろいろな論点があっても「真実」は唯一つです。そしてそれはゆるぎのないことです。宮下先生はご自分で行動されて、ひとつひとつを確認されます。「今なら、助けられる」と言われます。
花粉症についてもだれもが納得できる真実を自然界から学び取っておられます。スギは今10年くらいで、自分自身がこの劣悪な環境の中で生きられないことを感知して子孫を残すために、全力をふりしぼって大量の花粉をだしている。スギの自衛のための自然の姿です。スギが生きられる「土」と「空気」に戻してやる事です。
また、松についてもとても大きな問題を喚起していただきました。枯れてしまった松を2メートル程に切断して10本程まとめて積み、ビニールシートでカバーのしてある光景が山はだのいたるところで見られます。その中には松くい虫の薬をかけてあるのだそうです。薬で松枯れを防ぐ国の方針だそうです。
薬で治せると信じて、多くの薬を創り出し、それでも治しきれない現実が今、あります。薬だけではどうにもならない事にようやく気づき始めた私たち。余談ですが「薬をやめれば病気は治る」というわかりやすい本の著者でいらっしゃる安保徹先生を新潟大学にお訪ねしたとき、医者がね、自分が癌になると僕のところに来るんさ。「先生、薬は使いたくない。どうしたらいいんだろう?」と言ってね。
これまでアイナ株式会社は、私自身が普通の主婦で専門家ではないと言う立場をわきまえ、聞きかじりのいい加減なことを述べる事を控えて参りました。沖縄のサンゴの窮状と赤城山の松の窮状をこの目で知って、それでも穏やかに控えていくことは、わが身の保身に過ぎないなあと感じました。
アイナ株式会社にはずっと抱いてきた身にあまる大きなテーマがあります。それは「元気な赤ちゃんが生まれ、健やかに育てられる普通の社会を取り戻す」こと。
息子の伴侶のふとした言葉「お母さん、私、良かった子供が無事に育って」「仕事を持っている友達の多くは、第一子を流産している」。サンゴに出会って、いろいろな若い女性の苦しんでいるありのままの姿にふれて、このままではいけないなあと感じているときのことでした。これは大変なことです。
この赤城山で出会った若いご夫婦。第一子は流産。第二子は死産。第三子はこの子で、と3歳の男の子のことを話してくれました。
「600グラムぐらいで生まれたんです。ずっと郡大病院で育った。もう薬は飲ませたくない。しかし、子供の具合が悪くなると、『病院へ連れて行け、薬はただなんだから・・・』と周りの人にいわれる。この子が大きくなったら、環境に関心を持つような人になってほしいと、「環士」かんじと名づけました。野山を元気に遊ぶ環士くんを見ながら、今の環境がどうしてこんなになったか誰も気に留めない。
友達のお母さんに「薬じゃダメだよ」と言っても、一人だけ変なこと言ってると受けとられて浮いてしまいます。もう言わない事にしました・・・」と静かに話してくれました。
他でもたくさんのいのちを育てる難しさに出会います。基礎的なデータとともにミネラルの大切さを伝えられるよう、より一層励んで参ります。
|