炭の規格について

備長炭のあれこれを解説いたします!

紀州備長炭の用途 / シックハウス症候群 / 備長炭を使って洗濯 / 備長炭の正しい置き方

Qestion? 備長炭の産地

備長炭といえば和歌山県の「紀州備長炭」とばかり思っていましたが、必ずしもそうでもないようです。
「備長炭」とは正式にはどんな木炭を指すのでしょうか。

紀州産の備長炭

一般に「備長炭」といえば、紀州・和歌山県の中央部から南部にかけて沿岸部で生産される、ウバメガシ、カシという広葉樹を炭材にした白炭をいいます。非常に堅く、叩くと金属音がし、断面は貝殻のような光沢を放っています。
備長炭の名称は、万治年間(1658〜60)に紀州・北牟婁郡の炭やき、大津市右衛門が改良したとする説と、元禄年間(1688〜1703)に紀州・田辺藩の炭問屋、備長屋長左衛門が名付けたとする説があり、後者が通 説となっています。狭い意味での「備長炭」は、この地域特産の白炭をいいます。

紀州産以外の「備長炭」

では、和歌山県産の白炭だけが「備長炭」かというとそうでもありません。カシを炭材とした宮崎県北部の延岡市周辺の「日向備長」、高知県安芸郡周辺の「土佐備長」、ミズナラを炭材とした西木村などで生産される「秋田備長」などがあります。
日向備長は安政3年(1856)、日向炭の品質向上のため山元藤助ら三名が紀州へ調査に赴き、後に紀州から、製炭技術者を招き入れたという記録が残っています。また、土佐備長は明治末期、土佐を訪れた紀州備長の製炭者が豊富なウバメガシが薪として使われているのを惜しみ、息子とともに土佐に移り住んで横詰め製炭法を伝えたといわれています。

このように、日向備長、土佐備長は紀州・和歌山の技術が伝わって発展したものですし、また、秋田備長も製炭技術者の研究を重ねた結果 、いずれも非常品質の高い白炭となっているのです。

Qestion? 「備長炭」の定義

備長炭という呼び名は最近の木炭ブームもあってか、ずいぶんいろんなところで耳にするようになりました。
しかし、白炭であれば、「備長炭」という名称をつけても問題はないのでしょうか。

平成9年に廃止された木炭の日本農林規格の中の「白炭の規格」には、「『特選』に該当し、かつ、その硬度が15度をこえるものについては、等級の欄中『特選』とあるのは『備長特選』と読み替えることができる」とあります。「特選」の条件はページ最後の表にまとめましたが、この中でも硬度が15度以上のもののみが「備長炭」ということになっていました。ナラ、クヌギの黒炭の標準硬度が7度ですからかなり硬い炭といえます。

現在有効な規格としては、社団法人全国燃料協会、日本木炭新用途協議会、全国木炭協会が定めた「木炭の基準」があります。これは各会の会員が製造・販売する燃料用木炭の自主規格となっており、備長炭については、「白炭のうちカシ、ウバメガシを炭化したもので、精錬度が0〜3の木炭」と定義されています。

精錬度とは、精錬計という機械を使って測定した値のことで木炭に電流を通 して、その電気抵抗の度合いで決まります。炭素は電気を通しますから、炭化の度合いが高い(炭素の純度が高い)と電気抵抗は低くなるため、精錬度の値が低いほど良質な木炭ということになります。

輸入木炭にも「備長」が

紀州・備長炭の技術が伝わったのは、国内だけではありません。中国産のウバメガシ、カシを原木にした白炭は、通称「中国備長」と呼ばれています。国内産よりも価格が安いため、飲食店などの業務用として主に使われています。また、インドネシアなどの東南アジアで、マングローブを炭材とした堅い炭は、俗に「南洋備長」と呼ばれています。名前は「備長」ですが、叩いても白炭のような金属音はしません。また、塩分が含まれているため、鉄びんに使うと底が錆びるなどの事例も報告されています。

このように、現在は「備長炭」の名称を使用する事に関しては業界の自主規格しかなく、粗悪な木炭に「備長炭」という名称をつけて販売しても罰則規定はありません。反面 、炭材の基準は満たしていなくとも、秋田備長のように優れた白炭も現に流通し、一定の評価を得ているのが現状です。

備長炭は日本が世界に誇るべき技術のひとつです。しかし、国内の「備長炭」の産地の多くは、高齢化が進んでいるとともに、原木不足、後継者不足に悩んでいます。消費者が安心して買えるためにも、公的な品質基準が必要といえるでしょう。

旧木炭の日本農林規格のおける白炭・特選の規格
樹種類 カシから製造したもの
全体の形状 長さが20cm以上あって、丸ものにあっては径が2cm(硬度15度以上のものにあっては1.5cm)から6cmまでのもの、割りものにあっては長辺が3cmから7cmの四ツ割以内のもので、それぞれ径または長辺のそろいが格差3cm以内のもの。
樹皮の附着 附着していないもの
横裂又は縦裂 ないもの
形状 貝がら状(局面状)を呈するもの
色沢 金属光沢のあるもの
標準硬度 10度
精錬の程度 適度なもの
音響 金属音を発するもの
その他 臭気の発生、爆跳及び立ち消えのおそれの少ないもの
調整 粉、ぬれ皮及び土石その他の異物を包装内に含んでいないもの
包装 堅固で内容物のもれるおそれのないもの
正味量 7.5キログラム、12キログラム又は15キログラム

注1:「特選」に該当し、かつ、その硬度が15度をこえるものについては、等級の欄中「特選」とあるのは「備長特選」と読み替えることができる。

木炭の基準(第2条 燃料用木炭の基準)
黒炭 窯内の消火法により炭化温度400℃から700℃前後で木材質を炭化したもので、精錬度が3から9の木炭
白炭 窯外消火法により炭化温度が800℃以上で木材質を炭化したもので、精錬度が0から4の木炭
備長炭 白炭のうちカシ、ウバメガシを炭化したもので、精錬度が0から3の木炭
オガ炭 鋸層、樹皮などを原料としたオガライトを炭化した木炭
その他の木炭 黒炭、白炭、備長炭、オガ炭以外の木炭

注1:炭化温度とは、窯内の天井最上部から10センチ下がった所の温度である。
注2:精錬度とは炭化の度合いを示すもので、木炭精錬計により測定した結果を0〜9の10段階で示したものをいう。