健康になる、オイルの取り方

人体に不可欠な栄養素・脂質。その効果的な取り方と避けるべき点をご紹介。

脂質の働き

脂質は三大栄養素のひとつであり、ヒトが生命を維持するために欠かせない存在です。
脳組織の多くが脂質から成りますし、細胞膜の主要な構成成分は脂質です。
また、脂質は脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)やカロテノイドの吸収を助けます。

あぶら(油・脂)や脂肪というとネガティブなイメージになりがちですが、そうではなく、
良質な脂質を適量摂ることは、ヒトが生きていくために必須のことです。
ただし脂質のエネルギー価は、その種類に関わらず、炭水化物やたんぱく質の2倍以上と高いため、
どんなに良いものであっても適量を守ることがやはり重要です。
その目安量は、日本人の食事摂取基準において年代別に示されています。

ヒトが食事を通じて摂取する脂質のほとんどは「油脂」です。
常温で液体のものを「油」、固体のものを「脂」と呼びます。
植物性油脂の多くは油、動物性油脂の多くは脂です。
油脂は「グリセリン」と「脂肪酸」が結合して成り立っており、脂肪酸にはさまざまな種類があります。
脂肪酸は2つの種類に分かれ、脂に含まれるのが「飽和脂肪酸」、油に含まれるのが「不飽和脂肪酸」です。

飽和脂肪酸とココナッツオイル

飽和脂肪酸のほとんどは動物性油脂で、中性脂肪として蓄積しやすいこともあり、健康のためには避けた方が良い油脂とされます。
ただし例外として植物性飽和脂肪酸、近年大きな注目を浴びているココナッツオイルがあげられます。ココナッツオイルはそのおよそ70%を中鎖脂肪酸という脂肪酸が占めます。この脂肪酸は吸収の際にそのままエネルギーとして代謝されるため、中性脂肪として蓄積されにくい性質を持ちます。
また中鎖脂肪酸からは、ケトン体というエネルギー源が効率的に作られます。ケトン体はもともと、ヒトの体が飢餓状態となりブドウ糖が不足した際にエネルギー源として脂肪酸から作られる物質ですが、中鎖脂肪酸からは他の脂肪酸に比べてずっと効率的にケトン体が作られます。脳のエネルギー源は基本的にはブドウ糖のみですが、このケトン体はブドウ糖に代わり脳のエネルギー源となることができます。それだけではなく、脳機能向上や認知症予防につながるのではないかと期待されています。

さらに、ココナッツオイルにはビタミンEが豊富に含まれるため、酸化しにくく保存の効く油脂でもあります。
美容効果、エイジングケアも期待できます。
ただし市販のココナッツオイルの品質にはかなりのばらつきがあります。
「エキストラヴァージン」の名称は、品質の良い製品を見分ける目印になります。

また以下の、製法の違いも参考にしてみてください。

ココナッツオイルの搾油法による品質の違い

以下はいずれも、比較的品質の高い製品の製法ですが、その中でも、低温圧搾・発行分離法>低温圧搾・遠心分離法>乾燥圧搾法の順に、より高品質のココナッツオイルになります。ただし高品質なものはその分数も少なく高価になりますので、用途に合わせて総合的に適したものをお選びください。

■低温圧搾・発酵分離法
殻を割って生の白い果肉を取り出し、そのまま低温で圧搾します。圧搾して取れた液体には、ココナッツの水分、油分、ミルク分が混ざっているので、油分だけを取り出さなければなりません。
発酵分離法は液体をじっくり常温で2〜3日発酵させて分離させる方法で、ココナッツに含まれる生きた酵素を利用したバージンココナッツオイルの伝統的な製法です。ココナッツの栄養素や酵素がきちんと油分に残り、香りも豊かです。ただし高品質なオイルを安定して作るためには、温度や発酵時間をうまく調整し、オイルに水分が残らないようきちんと分離させるための熟練の技が必要です。
■低温圧搾・遠心分離法
圧搾して液体を取り出すまでは低温圧搾・発酵分離法と同じです。そこから液体を遠心分離機にかけてミルク分と油分を分離させるのが、低温圧搾・遠心分離法です。特徴は短時間で製造できるため低コストで作れること、また品質が比較的安定しやすいというのがあります。ただし、分離させるミルクの方に栄養素が残りやすく、香りも少し抑えられたものになります。
■乾燥圧搾法
殻を割って取り出した果肉を熱風などで乾燥させ水分を取り除きます。乾燥ココナッツの状態から圧搾し、油分を取り出します。水分が少ない状態で圧搾するため油分だけを抽出しやすいのですが、熱を加えてしまうため、ココナッツに含まれる酵素が壊れやすいのが欠点です。
芳醇な甘い香りがしますが、香ばしくなりすぎることもあります。

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸は、構造の違いにより「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。
多価不飽和脂肪酸はヒトが体内で作ることができないため、食事などで体外から摂取する必要がある「必須脂肪酸」です。

多価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸には「オメガ6系」「オメガ3系」があり、現代の食生活で特に不足しがちなのがオメガ3系です。オメガ3系の代表的な脂肪酸は「α-リノレン酸」で、これが含まれる油脂としては、亜麻仁油(フラックスオイル)えごま油があげられます。また、α-リノレン酸は体内に入ると、青魚にも多く含まれるDHA・EPAへと代謝されます。オメガ3系は高血圧や心疾患の予防、アレルギー反応の緩和などに有効といわれています。オメガ3系オイルは基本的に熱や光に弱く酸化しやすいため、加熱調理には向かず、賞味期限も短いのですが、この弱点を克服したオイルとしてインカインチ(サチャインチ/アマゾングリーンナッツ)オイルがあります。インカインチオイルはビタミンEを豊富に含んでいるため酸化しにくく、他のオメガ3系オイルに比べ保存性に優れています。
オメガ6系の代表的な脂肪酸は「リノール酸」で、これが含まれる油脂としては、胡麻油・麻の実油・グレープシードオイルなどがあげられます。コレステロールの低下や代謝の促進などの効果が期待されますが、過剰摂取によるリスクも指摘されており、現代の食生活においてはどちらかというと摂りすぎないように注意が必要です。オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の働きには拮抗する部分もあるため、適切なバランスを保ちながら摂るようにしましょう。

オメガ6系脂肪酸の食事摂取基準

年齢等 男性 女性
目安量 目安量
0〜5(月) 4 4
6〜11(月) 4 4
1〜2(歳) 5 5
3〜5(歳) 7 6
6〜7(歳) 7 7
8〜9(歳) 9 7
10〜11(歳) 9 8
12〜14(歳) 12 10
15〜17(歳) 13 10
18〜29(歳) 11 8
30〜49(歳) 10 8
50〜69(歳) 10 8
70以上(歳) 8 7
妊婦 / 9
授乳婦 / 9

オメガ3系脂肪酸の食事摂取基準

年齢等 男性 女性
目安量 目安量
0〜5(月) 0.9 0.9
6〜11(月) 0.8 0.8
1〜2(歳) 0.7 0.8
3〜5(歳) 1.3 1.1
6〜7(歳) 1.4 1.3
8〜9(歳) 1.7 1.4
10〜11(歳) 1.7 1.5
12〜14(歳) 2.1 1.8
15〜17(歳) 2.3 1.7
18〜29(歳) 2.0 1.6
30〜49(歳) 2.1 1.6
50〜69(歳) 2.4 2.0
70以上(歳) 2.2 1.9
妊婦 / 1.8
授乳婦 / 1.8

日本人の食事摂取基準(2015年版)より

一価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸で代表的なのは、「オメガ9系」の「オレイン酸」で、オリーブオイル・菜種油など一般的な食用油にも含まれます。ヒトが体内で作ることができますが、年齢と共に減少していくため、適度な補給が効果的です。不飽和脂肪酸の中では酸化しにくく、コレステロールの低下、生活習慣病予防などに効果があると言われています。特にオリーブオイルにはオレイン酸が豊富です。ただしこれも適切な量を守ることが大切です。またオリーブオイルもモノによって品質に大きな差があります。健康のためには「エキストラ・ヴァージン」オリーブオイルを選ぶようにしてください。

脂肪酸の分類と特徴


健康を害する脂質

その国産、大丈夫ですか?

オイルを選ぶときに気をつけてほしいのが、その種類だけでなく、原料の栽培方法と製造方法です。どんなに健康に良いといわれているオイルでも、原料の栽培に農薬や化学肥料が大量に使われていたり、遺伝子組み換え作物を使用していたりすることがあります。加工方法についていえば、ヘキサンなどの溶媒を使って抽出されたオイルは、その過程で高温で熱せられるため、酸化・劣化が進んでしまいます。

また、オイルをカプセル状にしたサプリメントなどの場合、原料の栽培地は海外であっても、充填が日本であれば日本産と表示することができます。そういった商品の場合、原料の栽培地として多いのが中国産とアメリカ産のようです。すべてとはいえませんが、中国産の場合は農薬の使用、アメリカ産の場合は遺伝子組み換え作物の使用が懸念されます。これは表示だけでは分からないことが多いので、気になる場合は販売元に問い合わせるか、産地が明示されている別の商品を選ぶことをおすすめします。

トランス脂肪酸

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種で、天然のものと工業的に作られるものとがあります。天然のトランス脂肪酸の多くはシス型という構造で、牛肉や羊肉、乳製品などに微量に含まれます。

健康を害する恐れがあるのは、工業的に作られたトランス型のトランス脂肪酸です。植物油は常温では液体状ですが、ここに水素添加をすることによって、半固体または固体の油脂を製造することができます。この際に、トランス脂肪酸が生成されることがあります。このトランス脂肪酸は、水素添加によって製造されたマーガリン、ファストプレド、ショートニング、それらを原料に使ったパン、ケーキ、ドーナッツや揚げ物などに含まれています。また、植物油の中には高温処理で脱臭を行うものがあるのですが、その際に植物に含まれているシス型の不飽和脂肪酸からトランス脂肪酸が生成されるため、サラダ油などの精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれます。
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールの増加と善玉コレステロールの減少、心疾患のリスクを高める危険性が指摘されています。2003年には世界保健機関(WHO)により、1日あたりのトランス脂肪酸の平均摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告が出されました。

コレステロール

コレステロールとは脂質の一種で、ヒトの体内に存在するコレステロールの約15〜30%は食事由来、残りは肝臓で合成して作られます。コレステロールもネガティブなイメージを抱かれがちですが、実は人体にとって必要不可欠な存在で、細胞膜や副賢皮質ホルモン、胆汁酸の原料となったり、ビタミンDの合成に使われたりしています。
血液中のコレステロールは、タンパク質と結合したリポタンパクという形で存在しています。リポタンパクには4つの種類があるのですが、特にそのうちの2種類が、ヒトの健康に大きな影響を及ぼします。それが、HDL(high density lipoprotein=高比重リポタンパク)とLDL(low density lipoprotein=低比重リポタンパク)です。HDL、LDLに運ばれているコレステロールをそれぞれ、HDLコレステロール、LDLコレステロールと呼びます。
この2種類は、善玉(HDL)コレステロール、悪玉(LDL)コレステロールの呼び名でもよく知られています。善玉が良いもの、悪玉が悪いものというイメージになりがちですが、実は人体にとってはどちらも必要な存在です。LDL(悪玉)コレステロールは、肝臓から体内の必要な各所へコレステロールを運び、HDL(善玉)コレステロールは、不要なコレステロールを肝臓に戻す役目を果たします。ただし、LDL(悪玉)コレステロールが増えすぎると、使われないコレステロールが血管内壁に溜まり、動脈硬化やそれに伴う疾患の原因となってしまいます。現代の食生活ではコレステロールが過剰になりがちなため、LDL(悪玉)コレステロールが問題になることが多いわけです。

参考
脂質と脂肪酸のはなし(平成22年9月 消費者庁食品表示課)>>
日本人の食事摂取基準(2015年版)厚生労働省>>
すぐにわかるトランス脂肪酸 農林水産省>>