プレマシャンティシリーズの裏側 お見せします!

生産者と消費者が、可能な限り直接繋がりあうために。

私たち人間が環境に影響を受けるように、ひとつひとつの商品もまた、育つ環境・作り手によって影響を受けています。従ってメーカーや産地に足を運んだり、生産者と直接お話をしたりするのは、その商品を知る「鍵」のひとつであると考えています。

各地を訪問するスタッフは、消費者としての好奇心に満ちています。そして「親」として、「未来の親」としての厳しい目も持っています。時には作り手にとって厳しい意見も出ますが、それも全て「美味しさ」と「食の安心・安全」は作り手と共に築き上げていくものだと考えているからです。

「生産者と消費者が、可能な限り直接繋がりあいたい。」

プレマシャンティシリーズには、私たちのこのような想いもこめられています。
生産者と消費者が共に切磋琢磨してこそ、これからの「食」が築かれていくのではないでしょうか。

 

生産者さんご紹介

熊本 有機農家 東さん

人間も畑も同じです。
小食だけれど太りやすい体質の人、沢山食べても太りにくい体質の人がいるように、畑も堆肥を入れた方がいい畑と、土自体が肥えているので堆肥を必要としない畑もあります。長期にわたって、1枚1枚の畑を見て回っていたらその特徴も見えてきます。

玄米を手作業で選別しているところ

玄米を手作業で選別しているところ

畑から生産物を取り上げるわけですから、土から栄養を貰っているわけです。取った分はなんらかの方法で還元する必要があるので、完熟の有機堆肥を自分でつくって土をつくっていく方法をとっています。けれどもこれはあくまでも基本の考え方でしかなく、収穫期に畑を1枚1枚見て、時々の実りを「ああ、こんな感じなんだな」と土の特徴を掴んでいくことが大切だと考えています。慣行栽培であれば、害虫の増え方をみてどのタイミングで農薬を散布するのか判断したり、どの時期に何をすればいいのかを判断したりと生産性をあげるための技術が必要となりますが、種をまいて草取りをして収穫するのみなので技術的なことはなにも必要ありません。

環境さえつくれば、植物は自然と育ちます。
お日様の力や、雨。自然環境が植物を育てるのであって、私たちが育てているわけではありません。自然の営みの中で育つので、いいものができるんです。
私たちが何もやってないからいいものができるんだと考えています。

選別用のふるい 目の粗いものから順番に

収穫の見極めは、自然が教えてくれます。
一番美味しい時期は、自然の生き物が知っているでしょう?彼らにもちゃんと分け前があるんですよ。
麦の収穫も、収穫時期は麦が教えてくれます。
畑にいって目を閉じて耳を澄ませば、もう収穫してもいいですよと麦が語ってくれます。麦は成熟してくると実が締まってくるので、日の光を浴びて熟してくると表面の薄い膜のような皮が、剥がれてはじけるような音がするんです。この音が沢山聞こえてきたら収穫の時期なんですよね。

イメージ

畑にはからすのえんどうが生えています

今は太陽暦が主流ですが、本来農業は月の暦なんだと考えています。
満月から新月、新月から満月に向かうときのエネルギーの違いも意識しています。江本さんが波動を数値化されて波動という言葉が一般的になりましたよね。私の農業高校の恩師がこの波動の研究をしているので、私の生産物も測定してもらったことがあります。驚くような数値が出て、「ああ、私がつくってないからだ」と思ったんです。「これは自然が育てているからだ」と。波動自体は別に強調することだとは思いませんが、私にとっては「私が極力手を加えずに、自然のままに育って貰おう」と確信した瞬間でした。


・有機 もちきび
・有機 たかきび

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・有機 黒米
・有機 赤米
・有機 みどり米

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・有機 押し麦
・有機 丸麦
・有機十穀 十福の恵み

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「わらしべ屋」の主人、椋さん

みやげ物屋さんのような外見に興味を引かれて近寄ると、甘い匂いが一層濃くなります。ケーキ屋さんの近くにいるような濃厚な甘い香り。バニラのような、煮詰めた砂糖のような・・・。周囲を包む香りに、胃袋が敏感に反応し口内に唾が溜まります。ガラスの向こうにはわずかな商品が見えますが、店員らしき人影はありません。入るに入れずうろうろとしていると、恰幅の良い男性が入り口から顔をだしました。人懐こい笑顔を見せる彼が、ここ「わらしべ屋」の主人、椋さんです。

黒豆を使った「しぼり豆」

兵庫県篠山市。全国にも名の知れた丹波種の黒豆の産地で、「わらしべ屋」の主人 椋さんは、名産の黒豆を使った「しぼり豆」や「煮豆」などの加工品作りを30年以上も続けています。甘く炊き上げた豆を乾燥させた、一見地味で素朴なお茶受けでしかなかった「しぼり豆」が、彼の手にかかるとコーヒーにも紅茶にも合うおしゃれなお菓子に大変身。化学合成された農薬や肥料を使わない黒豆を、バニラの風味豊かな「洋菓子」に仕上げた抜群のセンスと味覚の持ち主です。豆を煮あげて甘味を染ませ乾燥させるだけの簡単な行程を一切自動ライン化することなく、必要な部分だけ機械の手を借りて仕上げる製造方法の鍵は、職人の勘。原材料は黒豆と砂糖、塩。風味づけには、バニラエッセンスとブランデー。誰もがスーパーで手に入れられるようなわかりやすい原材料ばかりを使っていても、出来上がったしぼり豆は、豆の滋味と甘味、ブランデーとバニラの風味が複雑に絡まった一級品。毎日、毎日、同じ作業を繰り返しているからこそ磨かれる人間の第六感が仕上げた比類のない美味しさです。

黒豆加工

招きいれられた工場内は、丁度しぼり豆の乾燥作業のど真ん中。一歩踏み入れた途端に、むわーんと甘い香りが迫ってきます。長方形の浴槽のようなステンレスの桶の中に敷かれた布の上には、真っ黒につや光りしている黒豆。成人男性がひとり足を伸ばして入れる位の大きさのその桶の中には、重量にしておよそ60kgの「しぼり豆予備軍」が入っています。
「60kgは乾燥しているときの重量だから・・・実際には今はもっと重いですね」。
男性が二人がかりで布の両端を握り、ムラが出ないよう天地を返します。豆に傷がつかないよう慎重に、何度かにわけて天地を返すと、再び乾燥機に戻しました。ここから再び、最低4時間乾燥させます。

煮豆の釜

「移転してきたばかり」という工場の中央部は、ずらっと2列に並んだ鉄釜が。この鉄釜が煮豆の釜です。その奥にある小ぶりの流し台が、すべての工程の入り口となります。 「ここで洗った豆を、煮豆にする分はそのままその鉄釜にいれて、しぼり豆にする分はこのかごにいれてこちらの釜で炊きます」。
釜、と指された銀色の筒は、高さが160cm位あるでしょうか。周囲が一抱え以上ある銀色の筒は、しぼり豆用の煮釜です。
「この釜に入れて1回。煮汁を捨ててから2回炊いて、柔らかくなったところに蜜を入れ、糖度が60度くらいになるまで煮詰めます。60度になったらそのまま冷まして蜜をしみこませます。1回目を茹でた後に固さを見て、固かったら重曹を入れたりしますけど、まあほとんど入れることはないですね。」
蜜が染みるまでに1日。蜜が十分染みた豆を乾燥させるのにまた1日。

黒豆加工2

製造「工場」という呼び方をしても、全体が一望できる広さのこの室内には、自動化された「機械仕掛け」の装置はなく、すべての工程には必ずひとの目と手、五感が関与しています。
「豆はね、打ち付けてみると割れやすい豆かどうかがわかるから・・・」煮ている間に割れたり、かけたりする豆は、商品にはなりません。割れる豆か、割れない豆かをみきわめる技は、「その日の水の量」を見きわめる手段でもあります。「これをこう、落としたときの音がね」と、豆を手ですくってぽろぽろと落とす仕草で椋さんが云います。
「この落としたときの音がどんな風かで、『今日の仕上がりはこれくらい』とか、『今日は焦げるかもしれない』とかいうことがわかるんですよ。毎日作業している職人なんかは、『社長、今日の出来高はこれくらいです』って、しかかる前に教えてくれる。僕はもう毎日直接製造しているわけじゃないから、彼の云うのを聞いて『そうか、そうか』って」。
笑いながら話す彼も、「黒豆の目利き」といわれるまでには沢山失敗をしたのだとか。まだ大学生だった頃の椋さんは、縁があってこの篠山の地に足を運んでいました。当時はまだ、丹波種の黒豆というのは、世間に知られてもいなかったといいます。「農業加工品」の事業を立ち上げようと尽力していた彼のお父様と、「地元産」で丁度伸び始めていた黒豆。この2つの偶然が重なって「黒豆の加工品」に着手したはいいものの、「黒々と美しい大豆」と「加工にむいた大豆」は決して同じものではありませんでした。

黒豆加工2

「見た目がすごくきれいなね、つや光りした大豆を仕入れるでしょう。そうすると3ヶ月もするとカビが生えるんです。『大変だっ』てね、これを煮ても、苦くて食べられたもんじゃない」。 しっかり乾いた大豆は、表皮にくすみがあったりするものです。「すばらしくきれいな大豆はまだ水分が飛びきっておらず、長期保存にはむいていない」と、今だからわかることですが、経験の浅い当時の彼にはそこまで見極めることができませんでした。豆による水加減の違い、煮ようとすると割れてしまう豆。決して安くはない「丹波種の黒豆」を、いかに「商品化」できるように加工するか。創意工夫を繰り返す中で、結局落ち着いたのは「少量でも確実に、ひとの手と勘を使ってじっくりとつくること」でした。


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「昔ながらの製法で・・・っていうのは、違うかな」。
つくり方の特徴を教えてください、という問いに対してポロリとひとこと。「煮るのにも乾燥するのにも、機械が入っているし。『じっくり時間をかけて』だと思いますよ」。
黒豆は「黒光り」した色合いが命です。
少しでも「見栄え」の良いしぼり豆や煮豆をつくるために、あれこれ投入し発色を良くしようとする製造者が多い中、砂糖と塩、豆とわずかな香料以外は一切使用せず、ただ時間をかけて少量ずつおいしいものをつくろうとする「わらしべ屋」さんのあり方は、「真っ正直」な製造者の姿そのものです。

あらめ製造者 伴林さん

山の新緑が美しい時期は、海草にとっても芽吹きの季節。
島根県の最北端から「あらめ漁がはじまりますよ」とお知らせを頂いたのは、丁度、田に水がはいりはじめた時期でした。カルデラ地形の島前(どうぜん)と隠岐諸島最大の島である島後(どうご)によって成る隠岐諸島は、大山とあわせ国立公園に指定されている自然豊かな場所です。七類港からフェリーで2時間半。更に西郷の港から島の中心部を一路北へ、新緑に萌える山と早苗が風に揺らぐ風景を抜け、車で約40分。七類港では群青から青に近かった海が、島後(どうご)の中でも最北端に位置する白島海岸付近では、底まで透けて見とおせそうなエメラルドグリーンに変わります。私たちがご紹介している「隠岐あらめ」は、この息を呑むように美しい白島海岸沿いで採草されています。

は軽トラックの荷台に山のようにこんもり積まれた「あらめ」

あらめ漁の解禁日は年によって異なり、新芽が採草できるのは5月から6月初旬までのわずかな期間です。岩肌に根を張るあらめを採草するために切り立った岩沿いに船を寄せるため、完全な凪(なぎ)を狙って船を出し、箱めがねをつかって採草します。海が比較的穏やかだといわれるこの時期でも、雲ひとつない晴天が完全な凪(なぎ)の海を約束するわけではありません。漁が出来るか出来ないかは、すべて海の機嫌次第。風向きひとつで海が荒れ、漁師は浜に足止めされます。採草する漁師と、そしてそれを買い取り加工する製造者との連携によって食卓に運ばれるあらめもまた、自然によって左右される天産物であることにかわりがありません。
空が白みだす早朝5時ごろに船を出し採草してきたあらめを、乾燥し袋詰めするまでが漁師の仕事。そして、袋詰めされたあらめを出荷に応じて加工するのが製造者の仕事です。「隠岐あらめ」は年間をとおして販売されますが、その原料は葉が柔らかい時期に採草されたものだけに限られます。製造者は海が荒れて船が出せない可能性も考えて、1年間に必要な量に加え3~4か月分の予備も仕入れるといいます。特に個人の製造者は、あらめ漁の解禁からあご(とびうお)漁が始まるまでの1ヶ月程度の間に仕入れを終えてしまうようです。この中村地区のあらめ製造者である伴林さんのお宅を訪れると、作業場の屋根裏には、袋一杯に詰まったあらめがびっちりと詰め込まれていました。「まだ漁が始まったばかりだから、これからもっと増えますよ」という彼女の足元には、畳まれたナイロン袋が膝の高さ以上に積上げられており、外には軽トラックの荷台に山のようにこんもりと、サンタクロースの袋のように膨れ上がったナイロン袋いっぱいに、昨日仕入れたあらめが詰められ積まれていました。

ここがあらめの軸部分
「とってきたあらめは漁師さんがそのまま浜で乾燥させます。それを仕入れて、年間とおして加工して出荷します」。
荷台から降ろした袋を開けると、磯の匂いと共にぱりぱりに乾燥したあらめがでてきました。「ここが軸の部分ですよね。ぎりぎりで刈っていますからね。これがこう、こういう風にふたつくらい合わさって、下に一本長い軸に繋がっているんですね。それで軸の先が岩にくっついているの」。刈り取られたままのあらめは、軸から先端までで成人女性の片腕くらいの長さでしょうか。固い軸に繋がった薄く繊細な葉。少し緑がかった黒さの表面に、細かくうっすらと塩がふいています。漁師から仕入れたばかりのあらめを口にすると、磯の香りを追うように苦味が口の中に広がります。5mmにも満たないカケラを口にしただけでも、とにかく苦く渋い。あらめを加工する第一歩が、この苦味、アクを抜く作業です。
巾着袋状の目の荒い網
「この網の袋に入れて一旦また海に戻すんです。最低6時間か7時間くらい。前は一晩中戻していたんですけれど、温度があがってくると、私はちょっと長すぎるかなと思って短くして、朝つけたら夕方あげています」。巾着袋状の目の荒い網は、おとながひとりすっぽり入れそうな大きさで、女性の肩の高さぐらいの長さがあります。この袋一杯に乾燥したあらめをいれ海に戻すと聞き、思わず「重たいでしょう」と声が漏れます。
「重たいです。だから機械であげるんです。それをね、引き上げると真っ黒な汁が出るんですよ。ほんとにもう、真っ黒な汁がどんどん出てきます」。
海からあげたあらめからは、染めに使えそうなくらいの黒い色がどんどん出てくるといいます。
「でもそうしないと食べられないんです。よく(アクが)抜けてないと、苦味がのこっちゃう。美味しくなくなっちゃうんです」。

釜
網に並べて乾燥
アクが抜けきったものを、次は釜で煮ます。大釜の燃料は、なんと薪。大きな釜ふたつを火にかけると、夏場はとんでもなく暑くなるといいます。
「炊く時間は(加工者によって)みんなそれぞれ違うんです。その時間によって、固かったり柔らかくなったり・・・。企業秘密ですね」。
「とんだ企業秘密ですね」と伴林さんは笑いますが、薪火も煮あげる時間も、すべて美味しさに繋がっているのでしょう。煮あがったあらめは、次は網に並べて乾燥させます。干し網の木枠は、あらめの色素で漆を刷いたように黒く染まっています。
「幅広のばあいは、この状態で包丁で切ってます。どうもね、乾燥させた状態で切るとこなるし、すごい塩がね、舞って大変なので、煮てから切ることにしました。でね、大きいまんま煮たほうがいいような気がして。美味しい気がするんですよね。細切りの場合は仕方がないですけれど、幅広は私の場合は大きいままで煮るんです。そのほうが栄養が逃げないんじゃないかって」。
乾燥網1枚あたりに200~300g、一度の加工で大体60枚。一回に沢山できるものではない上に、それを連続するのだから決して楽な仕事ではありません。昔はお父様とふたりで作業されていましたが、今は製造行程は彼女ひとり。つけるのに1日。煮るのに2日。乾燥させるのにまた1日。細切りをつくろうと思うと、締めるのにもう1日。あらめの製造には最低でも5日はかかります。
「体力との勝負です。どういうわけか年々きつくなりますよ」。
伴林さんは笑いますが、海水に戻して水分をたっぷり吸い込んだあらめを引き上げ、釜で炊き上げ、乾燥させるという作業は、言葉以上に過酷でしょう。また力仕事でありながら、繊細で丁寧な配慮が必要な仕事でもあります。優しくそれでいて分厚い彼女の両手。柔らかく味わい深い本物の美味しさを作り出すのは、身体をつかって働く伴林さんの力強い両手と心遣いでした。
中村の浜で出会った地元の方

中村の浜で出会った地元の方がいいました。

「彼女はね、食べるひとのことも考えてつくっているんですよ。彼女にしか出来ない心遣いがあって、だから彼女のあらめは柔らかくて美味しい」。


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伴林さんに会いにきたというと、返ってきたこの一言。
あらめの美味しさは、大山隠岐国立公園の北端、
白島を望む澄み切った海で採取されているという理由だけではないようです。

葉の先端に近い部分が一部変色したように白くなっているあらめ

仕入れたばかりのあらめを見せていただく中で、葉の先端に近い部分が一部変色したように白くなっているあらめが目立ちました。 「最近、こういう風に茶色くなっているのが増えてきているんです。焼けているんでしょうかねえ。これは茶色ですけれど、白くなっているのもあります。南の方から、だんだん海草が白くなってきているという話も聞いたのですけれど・・・、石灰化というのかしらね。あらめもいずれそうなっちゃうんのかしら、と思ったりね」。
九州方面から暖流に乗ってやってきた魚も、昔は冬季の島根の海では生き残ることができなかったといいますが、今では海そのものが暖かくなったせいか、暖流の魚がそのまま定着しているといいます。陸地の生産者からも耳にする気候の変化。ここ隠岐の海でも少しずつ変わりつつある何かが、あらめにも影響を及ぼしているのかもしれません。

大山食品 大山憲一郎さん

かめ畑

大山さんは、環境保全型農業をいち早く取り入れたことで有名な綾町で生産される原料を昔から使用し、安全性とおいしさを追求してきました。
綾町(あやちょう)は、宮崎県の中西部に位置する町で、名水百選の町、有機農業の町、照葉樹林都市、町おこしの成功例として、自然の中での人間らしい生活を求める全国各地からの移住者が後を絶たない、「日本で最も美しい村」連合の一つです。長年にわたる取り組みが評価されて、2012年7月12日に国内では32年ぶり5ヶ所目となる、ユネスコエコパークに登録されました。

みなさんは、お酢がどうやってできているか知っていますか?

巨大な三石和甕

大山食品さんでは、まず、巨大な三石和甕(さんごくわがめ:一石が180リッターですので、540リッターくらい入るかめです)に、玄米と麹と水と種酢 (この中に様々な菌がいます)を入れます。そしてひたすら発酵します。

瓶の中で発酵が進行する様子

ただそれだけです。が……瓶(かめ)の中では、大きく3回の発酵が進行します。まず玄米のデンプンを麹菌の糖化酵素が糖に変えていきます。 この時点では「甘酒」です。そしてその糖を、酵母菌がアルコールに変えていきます。

お酢に変わっていく様子

この時点では「どぶろく」です。そしてさらにそのアルコールを酢酸菌がお酢に変えていきます。ここで「お酢」になります。


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厳密に言うと種酢をいれるので、酸っぱい甘酒、酸っぱいどぶろくといった感じです。
お酢の発酵にはある程度の温度が必要でので、かめは工場の南側の陽の良く当たる場所に設置されています。仕込みは春と秋の年に2回です。これが南九州の伝統的な製法である「屋外かめ仕込み」の黒酢の作り方です。
発酵食品でも、速醸法(より早く造る技術)の普及により、価格は安いものもありますが、古式醸造の静置発酵法(アルコール発酵は液面に酢酸菌が膜をはって発酵するためこう呼ばれています)で造ったお酢は、格別な味と風味を醸しだしています。約6ヶ月でタンクに移してまたさらに約6ヶ月間熟成させます。 黒酢によく合う、秘伝のレシピをご紹介します。ぜひお試しください。

黒酢屋コラム・黒酢の利用法あれこれ!

黒酢屋4代目の大山憲一郎です。

はじめまして。
黒酢屋4代目の大山憲一郎です。
「黒酢はクセがあって、どうも使いづらそうで・・・」という、ご意見を時々いただくことがあります。そこで、黒酢のクセを逆手にとった利用法をお伝えします。

まずは、黒酢のクセは何なのか?

3つの理由でそのクセがついています。まずは玄米を使ったお酢であること、2つ目は長期発酵熟成(1年以上)させていること、最後に屋外のかめ仕込みであること。玄米を食べたことのある方は、よくわかると思いますが、玄米には独特のクセがあります。お酢でも、白米からの米酢と玄米からの黒酢では味に違いがでます。長期発酵熟成させることと、屋外のかめ仕込みにより、様々な菌(麹菌、酵母菌、酢酸菌、乳酸菌など)が、その時期に応じた発酵をし、黒酢が出来上がります。酸味を中心に、甘み、旨味、苦味など複雑な特有の味を醸しだすのです。

その特有の味によく合う利用法は、大きく2つあります。

まずは、黒酢ドリンクとしての利用です。黒酢によく合う甘味や果実など、ベスト5は、①ハチミツ②黒蜜(黒糖)③果汁100%ジュース(みかん・りんごなど)④砂糖(キビ糖・てんさい糖など)⑤牛乳(豆乳)です。まずは黒酢の半分くらいの量から加えていき、お好みで割合を変えてみてください。酸味と甘味はよく合います。夏はペットボトルに作り置きをして冷蔵庫に入れておくと重宝します。

次に料理です

オススメは、お酢料理の隠し味に使うことです。お酢を使う料理は様々ありますが、米酢のみよりも、黒酢をほんの少量加えることで、旨味の幅がぐんと広がります。あらゆるお酢料理に仕えます。入れ過ぎるとクセが出てしまうので、少量から試してみてください。お酢が好きな方であれば、油を使った料理へ黒酢をふりかけると、さっぱりとして食が進みます。ドレッシングも定番です。

以下のレシピも参考に、黒酢の特長を理解して、いろいろなアイデアで黒酢を楽しんでください。

~黒酢を使った簡単・美味・健康レシピ~監修:大山酢店レシピ開発室

黒酢の三杯酢
  • 黒酢・・・大2
  • 醤油・・・大1
  • 砂糖・・・適宜
黒酢の酢みそ
  • 黒酢・・・大1
  • みそ・・・大2又は1
  • 砂糖・・・適宜
黒酢のすし酢(米3合のとき)
  • 黒酢・・・大4(60cc)
  • ・・・小1
  • 砂糖・・・適宜
黒酢の胡麻酢
  • 黒酢・・・大2
  • すりごま・・・大3
  • だし汁又は水・・・大1
  • 醤油・・・大1
  • 砂糖・・・適宜
黒酢の和風ドレッシング
  • 黒酢・・・大2
  • サラダ油・・・大3
  • ごま油・・・大1
  • 醤油・・・大1
  • 砂糖・・・適宜
  • みそ・ごま・とうがらし・・・少々
黒酢のタイ風ドレッシング
  • 黒酢・・・大2
  • 赤唐辛子・・・少々
  • ニンニク・・・1/4かけ
  • ナンプラー・・・大2
  • 砂糖・・・適宜
  • レモン汁・・・少々
黒酢の中華ドレッシング
  • 黒酢・・・大1・1/2
  • 醤油・・・大1・1/2
  • 豆板醤・・・小1/2
  • ナンプラー・・・大2
  • 砂糖・・・適宜
  • ごま油・・・少々
黒酢の
ベトナム風ドレッシング
  • 黒酢・・・大1
  • ニョクマム・・・大1
  • 砂糖・・・適宜
  • ピーナッツ(トッピング)
黒酢の
韓国風ドレッシング
  • 黒酢・・・大1
  • 醤油・・・大1・1/2
  • 砂糖・・・適宜
  • 赤唐辛子・・・少々
黒酢の梅ドレッシング
  • 黒酢・・・大6
  • 梅干し・・・1個(つぶす)
  • ・・・小1/2
  • 砂糖・・・適宜
黒酢の蜜柑ドレッシング
  • 黒酢・・・大1
  • サラダ油・・・大3
  • みかん汁・・・大2
  • 砂糖・・・適宜
  • 塩・こしょう・・・適宜
黒酢の柚子ドレッシング
  • 黒酢・・・大2
  • サラダ油・・・大3
  • ゆず汁・・・大1
  • 砂糖・・・適宜
  • みそ・・・適宜
黒酢の玉葱ドレッシング
  • 黒酢・・・大2
  • オリーブ油・・・大5
  • おろしタマネギ・・・大2
  • 砂糖・・・適宜
  • 塩・こしょう・・・適宜
黒酢の
フレンチドレッシング
  • 黒酢・・・大1
  • マスタード・・・大1
  • オリーブ油・・・大3
  • 砂糖・・・適宜
  • 塩・こしょう・・・適宜
黒酢の
イタリー風ドレッシング
  • 黒酢・・・大1
  • オリーブ油・・・大3
  • にんにく・・・1個
  • 砂糖・・・適宜
  • 塩・こしょう・・・適宜

●大1・・・大さじ1杯 : 15cc(15ml) ●小1・・・小さじ1杯 : 5cc(5ml)

※ 表記の量は目安です。味を見ながら量を調整してください。
※ 甘味が足りない場合は砂糖、きび砂糖、はちみつなどをお好みで加えてください。
※ 塩は自然海塩を使うとより一層味が引き立ち、健康にも役立ちます。

だいこんとベーコンの 黒酢健康サラダ

【材 料】
  • 大根・・・・1/4本
    (又はかぶ中2個)
  • ベーコン・・・・・50g
  • 黒酢・・・・少々
  • 砂糖・・・・適宜
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【作り方】
  1. だいこんを細切りにしてかるく塩をして水気をしぼっておく。
  2. 細切りにしたベーコンをカリカリになるまで炒めてだいこんとあえる。
  3. 黒酢をすこしからめて出来上がり。

豚肉のやわらか黒酢煮


【材 料】
  • 豚の三枚肉・・・・600g
  • しょうが・・・・・1かけ
  • 長ネギ・・・・・・1/2本
  • ごぼう・・・・・・1本
  • こんにゃく・・・・1個
  • 黒酢・・・・1/2カップ(100cc)
  • 醤油・・・・50cc
  • 砂糖・・・・適宜
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【作り方】
  1. 豚肉は5~6個に均等に切り分けておく。大きめの鍋に豚肉、ぶつぎりにした長ネギ、薄切りしたしょうがと一緒に豚肉が浸かるくらいの水をいれて火にかけ、 沸騰したらアクをとりながら30分程弱火でゆでる。
  2. 肉だけ取り出し、一口大に切ってゆでておいたごぼう、こんにゃくと共に鍋にならべて黒酢、醤油、砂糖、①のゆで汁1カップを加えて味がしみ込むまで煮込む。

黒酢のちらしずし


【材 料】
  • 米・・・・・・3合
  • ちりめんじゃこ・・・適宜
  • 竹の子・・・・100g
  • こんにゃく・・・・・1/2個
  • にんじん・・・・・・1/2個
  • 黒酢・・・・・60cc
  • 塩・・・・・・小さじ1
  • 砂糖・・・・・適宜
  • お好みでパプリカ、グリーンピース、いんげん、プチトマトなど
【作り方】
  1. 米をたいておく。
  2. 黒酢と塩、砂糖を混ぜ、ここにちりめんじゃこを混ぜておく。
  3. 竹の子、こんにゃく、にんじんをうす切りにし、お好みで甘辛く煮て冷ましておく。
  4. 炊きあがったごはんに2.の合わせ酢をかけ入れ、冷ましながら切るように混ぜる。
  5. 汁を切った3.の具を4.のすし飯にまぜあわせる。
  6. 大きめの皿にすし飯を盛りつけ、お好みで彩りのきれいな野菜をたくさんちらせば出来上がりです。

※ 具をハムやソーセージ、チーズなどの変えて洋風にアレンジしてもおいしい。

「湿気が多いと、水に還るんですよ。」低温製法 海水塩 馬鉢さん

くちの中ですっと溶けて、塩からさが残らない。

これが「低温製法 海水塩」をはじめて口にしたときの、第一印象でした。手のひらに乗せると湿り気があり、海水に触れたあとのようなじとっとした感触が残ります。粒子が大きくごつごつとした手触りなのに、繊細でまろやかな味わいで、見た目と味の印象が大きく異なります。製法は、日本でもあるいは世界でも、同じ作り方をしているところが数えるほどしかない、海水を直接釜に入れて湯煎で結晶化させるという独特の製法です。天日でもなく、直火で煮詰めるわけでもない。そう聞いてもピンとこないまま、とにかくその美味しさにご紹介を続けていましたが、念願かなって2014年秋、底引き網漁が解禁された時期に工場をご訪問しました。

高速道路網が整った今でこそ一日あれば悠々と往復できる場所になりましたが、以前は一泊旅行で行くような場所だったと聞きました。高速道路を下りてからさらに山を越え、海岸沿いへ一路。周辺には民家も少なく、窓を開けるとエンジン音を打ち消すように波の打ち寄せる音と清涼な空気が押し寄せます。海に囲まれた山裾の限られた陸地に、道と民家、田畑が並ぶ日本独特の半島の風景の中、海岸線に沿って走る道を辿っていくと、能登半島の先端、底まで透けて見える透明度の高い海に面して、「低温製法 海水塩」の工場がぽつんと立っていました。他の製塩所のように塩田があるわけでもなく、目印になる看板もないため、景色に誘われて運転しているとそのまま通過してしまいそうです。車を止めると早速、工場長の馬鉢さんが迎えてくださいました。

ご挨拶もそこそこに、製塩の手順に沿って見学会が始まりました。

まずは塩の原料になる『海水』の取り込みからです。案内されたのは、工場の真裏にある海岸。工場は海岸沿いぎりぎりに立っており、ごつごつとした岩が並んだ浜が間近に迫っています。浜といっても、海水浴場のように広がった浜ではなく、狭く、岩がごろごろと転がった浜です。訪問当日は驚くような晴天で、海も穏やかだったこともあり、水底に転がる石の一つ一つ、ゆらゆらと動く海藻類の動きまで、完全に見て取れる、透明度の高い海が広がっていました。視線を上げると、水平線が緑色に広がっています。

取水場所はそこから電気式のポンプをつかって、直接ホースでくみ上げます。あそこにホースが見えますが、あそこからもう少し、10m位沖にでたところまでホースが伸びています。ここが奥のポンプにつながる取水口で、このホースをそのまま海に入れて海水をくみ上げています。

そういって指で示されたのは、到底人の力では持ち上がらないだろうと思えるような大きな岩でした。
「海から水を取っています」と聞いてはいましたが、見せて頂いたのは、まさか、まさかの風景でした。海の中に差し込まれたホースから直接、ポンプを使って工場内にある貯水タンクへ水を汲み上げています。もちろん海藻や異物はフィルターで除去されますが、浸透膜のようなもので濃縮することはありません。15トンのタンクに貯えられた海水は、海の水そのままです。

民家がほとんどない・・・というか、排水がないので水はすごくきれいです。このあたりは、(地形的にも)若干突き出ているので、透明度がすごく高いです。能登半島のこのあたりは、許可なく勝手に人が海に入ったり、貝や岩をもって出たりはできません。確か国立公園に指定されていたのかな。私も10年来ここで働いていますけれど、貝を取ったりしたことはないですよ。なかなか厳しいとこなんですよね。

汲み上げた海水をそのまま製塩槽に汲み上げても変わらないのではないかと思いましたが、工場のある海域は波が荒く、四六時中荒れるため、都度採水していたのでは作業が滞ってしまうそうです。また海が荒れると水の透明度も下がるため、透明度が高いときに採水して備蓄しておく必要があるのだと教えて頂きました。
備蓄された海水は、次に、タンクに隣接したステンレスの水槽にダイレクトに流し込まれます。蓋をあけて中を見せて頂くと、ほんわりと湯気が立ち上り、磯の香りが強くなりました。水槽の底には、白や茶色の塊が沈殿しています。ステンレスの層は2重になっており、海水の入った層は、簡単にいうと、風呂の中に手桶を浮かべたような状態になっています。海水は、この手桶の内側に溜められます。

ここで海水を温めていくんですけれど、海水は不純物の塊ですから、酸化鉄や炭酸カルシウムなどを含んでいます。炭酸カルシウムは、簡単にいうと貝の成分ですね。この茶色っぽく見えるのが、炭酸カルシウムです。こうやって沈殿しているものが、人体には有害と云われる酸化鉄成分やカルシウム系の含有物です。

海からくみ上げられた海水の濃度は、約3.5%。これを湯煎で温めながら、大体6%の濃度になるまで濃縮します。

ここ(この工程)で、大体24時間くらいかかります。風呂の水よりは温かいですけど、手を入れられる程度の温度です。これで自然蒸発させて、水蒸気で水分を抜いていきます。時間がかかります。最低で24時間、もう12時間必要な時もあります。

了解を頂いて手を差し込むと、確かにお風呂よりも少し熱いかなという程度の温度で、つけていられないほどの熱さではありませんでした。一度タンクから海水が流し込まれると、次の工程に適した濃度まで濃縮されるまで、継ぎ足されることはありません。この水槽で濃縮された海水は、汲み上げられて次は隣の二次工程、三次工程へ移されます。
工場内の製造場所は大きく二つの部屋に分かれており、一つ目が貯水タンクと一次濃縮の湯煎槽が設置されている部屋、二つ目が二次・三次(最終製品化)工程の湯煎槽が設置されている部屋です。二次・三次(最終製品化)工程の湯煎槽の中を見せて頂くと、水面は白く濁り一面に塩の花が吹いていました。これが塩化ナトリウムの結晶です。ここには一次濃縮で除去しきれなかったカルシウムなどの成分も混ざっています。蓋をあけるとゆらゆらと湯気があがりますが、室内は決して高温ではありません。大きな音もせず、静かな広い部屋の中に、ステンレスの大きな水槽が並んでいるだけです。

(ほかの塩と比べると)
低温で結晶させているので、粒が大きいです。

なるほど、透かして見ると、四角い結晶がつながっているのが肉眼でもわかります。

硫酸カルシウムや炭酸カルシウムという物質は、人体に入ると溶解しにくいんですよね。もちろん塩と一緒に余分なものは排せつはされるんですが、ただ固形物ですから人体に入ると溶けにくい。その塊がそこに置いてある白い板です。海水を濃縮する過程で、ああやって水槽の底に沈殿して固まっていますので、先に取り出します。昔のひとはこれも塩と一緒に体内にいれていたんですよ。ほかの製塩所では、これ(固まって板状になった硫酸カルシウムや炭酸カルシウム)はありません。

そういって示されたのは、第二・第三工程の部屋へ移動してからずっと気になっていた、黄色っぽい濁りのある白い板。壁に立てかけられ、高さ50cm、幅30cm、厚さは10cmくらい。拳で叩くと非常に硬く、カンカンと乾いた音がします。この板は、天然の石膏ボードだといいます。外にも白い粉の山がありましたが、それが沈殿して固まると固く重さのある板になるのだそうです。

塩田の塩は、甘みを感じます。それは塩化カルシウムが入っているからです。マグネシウムが入っていると、コクが増します。だから一概に、完全ににがりを抜いたり、塩化カルシウムを取り除くのがいいとは言い切れないんですよね。塩田で釜炊きの塩は、ちょっとパウダー状になりますが、さらさらになるのは塩化カルシウムや硫化カリウムを含んでいるからです。うちの場合は粒があらくて固いんですが、それは、マグネシウムとカリウムが主だからです。釜だきの塩もちょっと工夫をすれば粗塩のようにもできるんだけれど、見た目は似ていても成分は決して一緒ではないです。このあたりには製塩所が沢山ありますけれど、塩カルみたことないっていう製塩所のひとも少なくないですよ。
大体どこの製塩所も、この塩化カルシウムは出てこないです。その理由は100度で炊くからなんですね。塩化カルシウムとカリウムの沸点はほぼ変わりません。だから100度で炊くときも、もちろん表面にぱっと浮いてくるんですけれど、ぐつぐつ、ぐつぐつと煮ていると、取り除く時間的な余地がないんです。取り除かれなかったら(塩化カルシウムは)どうなるんだというと、そのまま塩に入るんですよね。もちろん、100度の時点で硫酸カルシウムと塩化カルシウム、ナトリウムはほとんど同時に結晶化しだすのでうちでも完全に取り除くことはできません。すべての硫酸カルシウムや炭酸カルシウムを取るわけではないです。塩化カルシウムを全部取ると、塩にまろやかさがなくなりますという方もいるんですけど、うちの場合は可能な限り全部とります。残したほうがいいのかどうかは、いろいろな意見がありますけどね。

水槽の温度もそれほど上げず、時間をかけて余分な水分を蒸発させて結晶化していきます。水槽の中に手を浸しても、やはりお風呂よりもまだ少し熱いかなという程度です。この二次・三次工程でかかる日数は、気温や水の状態によっても異なりますが、最低で2日。最終工程ではにがりと塩だけが残りますが、塩を寄せる一歩手前、にがりが得られる前にカリウムが結晶化するため、「低温製法 海水塩」にはマグネシウムではなくカリウムが含まれます。最後に水槽に残った水が、「にがり」です。
このにがりは、無色透明で、水道水と変わらない透明度です。舐めると、塩辛さの中に刺激的な苦味を感じます。海水のようにべたべたせずに、さらっとしています。塩からくて渋みのある「にがり」が、豆腐作りになると逆に甘味を生むのだとは、今にがりを卸している先の豆腐屋さんの談。ほかの業者からもにがりを取り寄せてみたものの、どうしても甘みが再現できないと、最終的に「低温製法 海水塩」の製造時にできたにがりをつかっているのだと教えて頂きました。

この近辺の製塩所の方には、こんな風にはできないといつも言われています。周辺の製塩所でとれるにがりは、茶色っぽく、濁っています。その茶色が鉄成分、酸化鉄や炭酸カルシウムの色だといわれます。でもこれは強酸性なんですよね。塩田方式でもそうですが、昔は(にがりは)ものすごく茶色かったんですよ。鉄釜で煮ますから、酸化鉄なんかの色がついて、塩も茶色がかっていることが多いんですよね。

昔、にがりブームの折に、茶褐色のにがりが問題になって以来、ステンレス層が普及したり、濾過技術が進み、ボトリングして量販されているにがりの多くが透明になったのだそうですが、帰路立ち寄った揚浜・平釜方式の製塩所ではオレンジ色のにがりにを見かけ、驚きました。
能登半島には多数の製塩所が点在しています。特に輪島から能登半島の先端にかけての道筋は、塩街道と呼ばれるほど製塩所が密集しています。

このあたりは産業がないから、市や県が主導して輪島から始まる塩街道にはたくさんの製塩所ができました。先端までいくと煙がね、もくもくとあがってます。今はたくものがたりないから廃材を使って火を確保しているような具合なんですよ。5年くらい前まではこの辺の鉄釜の塩は、ちょっと茶色くてね・・・砂が入っていたり、鉄釜の色だったりいろいろなんだけどもね。それ以前にも、この辺のひとは平釜もって自分で作ってたみたいです。

製塩業に携わる中で馬鉢さん自身、塩について考えることが多いといいます。

硫酸カルシウムや炭酸カルシウムにしても、人体に入ったら間違いなくダメっていうわけではないけれど、水には溶けませんし、身体の中からどうやって排せつするんだ?というのが疑問ですよね。時々、食塩でもいいんじゃないの?と思うときもあるんですけど、ひとのからだってアルカリ性じゃないですか。だから内臓も、アルカリ性になるように整えないとダメなんじゃないのって考えると、酸性の塩はダメだよなと思ったり。塩の取りすぎだっていわれるんですけどね、どんな塩を使うかによっても使う量は変わってくるだろうとも思います。


塩を作るには大きくわけて、海水を天日で濃縮する「天日採塩法」と、塩のもとになる鹹水(かんすい)を精製し、火を加えて結晶化させる「煎熬採塩法」(せんごうさいえんほう)のふたつがあります。日本では伝統的に後者の「煎熬採塩法」で製塩されており、 1) 鹹水の製造方法と2) 結晶化の方法の2点にわけることができます。鹹水の製造方法とは、塩田の方式とも言い換えられます。鹹水とは塩のもとになる塩分濃度の高い塩水、つまり塩のもとです。これを精製する方法は、海水を海岸から離れた場所までくみ上げる「揚浜式」、塩の満ち引きを利用する「入浜式」、枝条架(しじょうか)と呼ばれるすだれのような装置を利用する「流下式」、イオン交換膜をとおし濃縮する「イオン交換膜製塩法」の4種があります。採種された鹹水は、主に平釜式、真空式・加圧式(立釜)、噴霧乾燥などの方法によって、煮詰めて結晶化、つまり煎熬(せんごう)されています。塩の製法は、消費者にわかりやすいよう食用塩公正取引協議会が食用塩の表示ルールを規定し、記載を統一するよう活動していますので、多くの商品には「天日・立釜」や「イオン膜・平釜」などの表示がされています。しかし「低温製法 海水塩」は、先に挙げた規定には当てはまりませんし、食用塩公正取引協議会にも加盟していません。


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低温でじっくり結晶化させることで、湿度の高い日に外で空気にさらしたまま置いておくと、溶解して水に戻る。それが「低温製法 海水塩」です。身体の中に入った時にも、同じように溶けて水になるお塩だともいえるでしょう。 粗塩を好む方が増えた結果、市場には粗塩が増え、製法が洗練された結果、塩が白色化しましたが、一度固形になった塩は、分析しない限り何が混ざっているかはわかりません。 海水をそのまま天日乾燥し結晶化させる製塩方法もありますが、塩度の高い環境を好む細菌の心配もあり、天日干しの塩を避けたほうがいいという意見も少なくありません。何を選ぶかは最終的には個人の判断ですが、味だけでなく「体内に入った後の塩の動き」を判断の材料とする選び方もあるのではないかと感じました。



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