
実は万能!まるや八丁味噌の八丁味噌
延元2年(1337年)の創業以来、1000年をはるかに超える伝統の味を今に届け続けているのが「まるや八丁味噌」の八丁味噌です。
江戸時代から続く製造法に忠実に、高さ2メートル近くあるスギの木桶に味噌のたねを仕込み、代々引き継いできた丸い石を約3トン積み上げて、二夏二冬(2年以上)そのまま天然醸造。材料は大豆と塩と水という、いっそ潔いほどシンプルな作り方です。時代の変遷とともに、大豆を蒸すせいろと薪釜が機械仕掛けのスチームになったり、大豆を潰すのに機械を使ったりと近代的に変化している部分もありますが、作り方の基本は全く変わりません。約6尺のスギ桶に味噌のたねを仕込むのも、仕込んだ味噌のうえに蓋をするように、1個数キロから数十キロある大小さまざまな石をバランスよく美しい円錐状に積み上げるのも、代々引き継いだ知恵のうえに更に経験を重ねた職人たちの仕事です。そして味噌を育てるのは、麹菌をはじめとしたさまざまな菌たちの仕事です。味噌蔵の職人たちは、気候の変化にあわせて時には風を送り、時には扉を閉めて暖かくし、自然のチカラがじっくりとみそを育てるさまを見守っています。これが江戸の世から変わらない、八丁味噌醸造の根幹です。
八丁味噌は三河地方に伝わるとても個性的な味噌ですが、作り方は麦や米の味噌とも似ています。
まず「麹(菌)」をつかうこと。八丁味噌は、米や麦を麹に育てる代わりに、蒸して潰した大豆のボールに麹菌をつけ麹にします。そして「大豆」を使うこと。八丁味噌で使うのは、大豆と塩のみ。穀物は使いません。
最後に自然に委ねて醸造すること。麦や米の味噌の多くが1年程度の醸造であるのに対し、八丁味噌は2年以上の月日をかけて醸造します。濃く深い旨みと、印象に残る複雑な風味。それは蒸して潰した大豆をボール状に丸めて麹をつけたら、職人が直接大桶に入って均し、踏み固め、均し、踏み固め・・・余分な空気が入らないよう職人が淡々と味噌のたねを仕込んでいきます。一見単純に見える作業でも、これが八丁味噌の基礎。石積みを支える土台となる仕込みは、経験を積んだ職人だからなせる技です。出来上がった土台のうえに、石を「積む」。大きさも形も様々な石の顔を見ながら、美しい円錐に積み上げるのもまた修行を重ねた石積み職人だからなせる業なのです。二夏二冬(2年以上)熟成された味噌の上は、成人男性が立って掘り出し作業をしてもびくともしないほど硬くしまって、約3トンを支え続けた味噌のありようが、食欲をそそるかおりと共に実感できます。
醸造というと、麹や糀(こうじ)が、でんぷんをぶどう糖に、たんぱく質をアミノ酸に酵素分解する反応と思われがちです。八丁味噌の醸造には、もちろん麹菌をはじめとする様々な菌たちが大活躍しますが、ヨーグルトやキムチの製造の主力選手である「乳酸菌」も深く関わっています。時間をかけて天然熟成させた味噌だからこその濃い旨みと共に、ほんのり感じる酸味は八丁味噌ならではの乳酸菌の旨味です。麦みそや米みそではほんのりした甘さも感じるけれど、八丁味噌は甘味よりも旨味が主役です。濃厚な旨みと深いコク。ほんのりと感じる酸味で味わいはキレがよく、少量でも味が決まります。使う時は、まずいつもの味噌の半分量で。そして「煮込まない」のがポイントです。
味噌が主役に
お味噌汁にするなら、だしは控えめでも十分。八丁味噌の複雑な旨みは、だしが控えめな方がひき立ちます。たとえば、アサリやシジミ。たとえば、さつまいもやかぼちゃ、玉ねぎなどの甘い野菜。素材が出すだしに、八丁味噌を少しいれるとコク深いお味噌汁に大変身です。味わいの濃い木綿豆腐やサトイモなど、主張の強い食材との相性が抜群なのも八丁味噌の特徴です。
まず、少量で
コクの強い八丁味噌は、ガンと強い旨みを足してくれます。麦みそや米みその感覚で入れてしまうと、びっくりするほど濃く仕上がってしまうから、少しずつ自分の好みの分量を探すのがコツです。またカレーやハヤシライスなどの煮込み料理に少量加えると、味に深みがでるのでお試しください。
煮込みは具材と
八丁味噌の味わいは、コクと酸味だけではありません。火を加えると味わいが変化するのも八丁味噌の特徴です。味噌汁にするなら、最後に溶かす。煮込み料理は具材と。長時間や強火の過熱で出てくる苦みや渋みは、素材と一緒に煮こまれることで複雑な旨みに変化します。八丁味噌は初体験!という方は、まず加熱時間は短くするのがいいかもしれません。ソースやたれにするのなら、みりんや砂糖などの甘味を加えると味に深みが増します。